ID:A01794-00020-10164
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第25回全国介護老人保健施設大会 岩手

16-第12-A1-6

目標を取り戻そう

○三田容子1,竹内幸治1,山根大介1,田中彰1

1老人保健施設 はまゆう)

<はじめに>当デイケアは老健に附設した定員54名のデイケアである。 今回、「温泉に入りたい、旅行した思い出の地に行きたい」など、御利用者が日頃望みながらも諦めていた事に対する挑戦を援助し、目標を取り戻してもらう為に続けてきた取り組みとその結果を紹介する。
<目的>胸に秘めた目標や夢に向かって挑戦する事を支援し「やれば出来るのだ」という経験をしてもらう。<挑戦事項の決定> アンケートを配布しその回答の中から援助が可能な事柄を見つける事にした。ご利用者160名中59名から自筆の回答を得ることができた。アンケート内容を「もう一度やってみたい事・行ってみたい所は何ですか?」という簡単なものにした事で、「仕事・習い事・学校に行きたい・旅行」等の具体的な回答を多数得た。アンケートの回答を元に「昔の息抜き」「思い出の地へ」「社会交流」と、3つの挑戦を利用者と共に取り組んでみる事にした。挑戦1「昔の息抜き」平成24年12月、屋外露天風呂での入浴。挑戦者S氏要介護3、突進歩行。M氏要介護2、足が上がらず小刻み歩行。T氏要介護3、パーキンソン病で松葉杖歩行。3名とも転倒歴があり自宅では入浴していない。入浴動作全般に介助を要し・浴室内移動は移動用チェアーを必要とする状態である。挑戦の条件として脱衣場、浴場内移動は歩行。衣類着脱、洗身・洗髪を可能な限り自力で行う事を提案し、実施日までにリハビリスタッフへも必要な練習を依頼した。挑戦2「思い出の地へ」平成25年8月、旅館での人情芝居見学。挑戦者N氏要介護1、在宅酸素を常時要す。A氏要介護2、自律神経失調症。N氏要介護2、左股関節に伸展制限があり転倒を繰り返している。挑戦の条件として自動車に80分乗車、座敷に座り2時間の食事と芝居を観覧、実施日までにリハビリスタッフに畳の上に座れるか見てもらい、必要なら練習をする事とした。挑戦3「社会交流」平成24年~平成26年の毎年1回。幼稚園児とのデイキャンプ。挑戦の前に条件として可能な限り毎年参加する事、昔ながらの米の炊き方、火の起こし方を子供達に教えながら一緒にし、屋外にて過ごす事を記載したポスターを掲示し希望者を募った。その他「昔の息抜き」では、我が子と行った地元鳥取港での魚釣り。「思い出の地」では、社員旅行で行った遊覧船巡りと家族写真を撮った思い出の展望台に行く。「社会交流」では竹輪工場での竹輪作りなどの挑戦を実施した。
<結果>挑戦1「昔の息抜き」では、屋外露天風呂の床は石畳で手すりも無い状態だった。しかし、3名とも何十年ぶりに来られた喜びと昔話に花が咲き、気が付けば自分で衣類を脱ぎ、浴場内移動、洗身洗髪をほぼ自力で実施。介助をしたのは背中を洗う程度で露天風呂の中に入る時も、「入れる!」と自分達で入ってしまった。挑戦2「思い出の地へ」では、旅館側が気を使い座椅子の準備をしていたが、食事と芝居観覧の2時間畳に座って居る事ができた。そして気持ちも若返り、表情はお年寄りでなく女性の顔になっていた。芝居の最後は感動し涙を流す場面も見られた。
後日、御利用者からの手紙には、「こんな酸素吸入が必要な人間が2度と旅行気分を味わえるとは思ってなかった、人生を諦めるのはまだまだ早い」とのコメントがあった。挑戦3「社会交流」では、要支援1から要介護3のご利用者9名が挑戦。薪の割り方や火の起こし方を指導し、交流数ヶ月前から「子供達にお土産を手作りする」と言われ、「竹とんぼ」「紙飛行機」などのおもちゃを一致団結して作成する事が日々の目標となった。ご利用者の手作りおもちゃは3年間で約80名の子供達に手渡された。そして色々な挑戦に参加してきた、当デイケアのご利用者田島氏が、パーキンソン病という難病に負けることなく、自分の掲げた目標に挑戦し平成25年10月「自転車でのしまなみ海道80キロ横断」という快挙を達成された。この挑戦は新聞各紙も取り上げ、テレビでも放送され大きな反響と感動を呼んだ。
<考察とまとめ>デイケア御利用者が望みながらも諦めている事に対する挑戦を援助する取り組みを続ける中で、「孫を連れて電車で小旅行をした」、「何十年ぶりかで美容院に一人で行ってきた」、「何年も欠席していた同窓会に参加した」など、私生活でも諦めていた事に挑戦したという報告があった。田島氏の「自転車でのしまなみ海道80キロ横断」挑戦後の報告会のコメントでも「デイケアでの色々な経験や挑戦が自信となり、目標の実現のきっかけとなった」とあり、御利用者が諦めていたことに挑戦する事で「やれば出来るのだ」と自信を付け、個々の目標に向かっていくきっかけ作りへと繋がったと考える。しかし、挑戦を援助する中で、普段出来る事まで介助し、その積み重ねが「出来ない」と言う気持ちを植え付けて目標を失わせているのではないか?という事にも気づかされた。出来ない事ばかりに目を向けるのではなく、今出来ている事を一緒に伸ばしていくケアが大切だと今回の取り組みで感じた。

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