ID:A01794-00020-10567 |
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17-第6-C9-3
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壊死化した褥瘡も入院せず軽快!
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○川口俊子1,高田哲也1,川窪昌彦1,内城好美1 (1介護老人保健施設 オキドキ)
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【はじめに】 寝たきりとなってしまった方の合併症のひとつに褥創がある。高齢者施設で発生することも多く、身体機能への影響は大きい。当施設でも既に褥創をかかえた状態で入所してくるご利用者が後を絶たない。 平成25年7月1日センチュリーメディカル株式会社の「SNaP陰圧閉鎖療法システム」(以下SNaP)が保険適用になり、局所陰圧閉鎖療法が必要な創傷を有している患者の中で、入院が出来ない、又は入院加療の必要がない症例に対して、外来通院での治療が可能となった。当施設では病院との連携を図り、このSNaPを用いた褥創処置に参加したため、ここに経過を報告する。 【処置期間】 平成26年1月~平成26年4月 【目的・方法】 SNaPを用いた褥創治療と経過観察。 【対象利用者概要】 Y氏。77歳男性。要介護度2。ホームヘルパーを利用しながら独居生活を送っていた。平成25年9月21日23時頃転倒(詳細不明)。翌22日午前中、パソコンラックにもたれかかり動けなくなっているところを、ヘルパーが訪問時に発見。緊急入院時にはすでに左上肢の完全麻痺、左大転子部に10×5cmの褥創があった。 平成25年11月11日、当施設入所。褥創は8×4cmで黒色化しており、ポケット発生の可能性あり。併設クリニック整形外科受診にて同年12月12日まで週1回のデブリードマンとゲーベンクリーム処置が施された。 同年12月18日:併設クリニック整形外科医よりF病院皮膚科を紹介され受診。皮膚科医師指示により、シャワー洗浄後にカデックス軟膏塗布、ガーゼ保護を1日に2回処置へ変更となった。このとき創部は6×5cm。ポケットが確認された。 平成26年1月21日:処置を継続してきたが創部は4×3cm。肉芽の再生不良でポケットも依然確認されるため、Y氏の意思と家族の同意の下、F病院にてメーカー同席でSNaPを開始することとなった。 【経過・結果】 平成26年1月21日から3月21日まで週2回、経過観察と器械交換のためF病院皮膚科外来受診。当施設看護師が同席。 1月28日:器械不具合発生。メーカー問い合わせ、受診にて創部からの浸出液増加に伴うものと判明。浸出液を培養検査提出。デブリードマン施行。創部は4×3cmとなるが、全体の肉芽盛り上がりを確認。 1月31日:培養結果からブドウ球菌が検出され、一時SNaPを中止。シャワー洗浄後にゲーベンクリーム塗布、ガーゼ保護を1日に2回処置へ変更。 2月13日:浸出液を培養検査提出。デブリードマン施行後、同処置続行。 3月4日:ブドウ球菌陰性のためSNaP再開。 3月21日:SNaP終了。創部は2×3cm。肉芽再生良好。洗浄後プロスタンディン軟膏1日1回処置へ変更。4月22日のF病院受診予定まで同処置続行。 【評価】 SNaPは比較的新しい治療法であり、その対応には試行錯誤の連続であった。しかし、その効果は短期間で驚く成果が確認された。また懸念されていた機械装着によってご本人の動作に支障をきたすこともなく、治療をしながら変わりない施設生活を過ごすことが可能であった。さらに毎日2回の処置を行うことによるご本人やスタッフの労力も削減されたことは、週2回の受診労力を差し引いてもメリットといえる。その反面、入所中の受診のため、治療費は施設負担となった。 【まとめ】 今回のケースからSNaPシステムは褥創処置に劇的な変化をもたらすものであることがわかった。しかし、褥創は一度発生させてしまうと長期にわたり治療が必要となる疾患であり、ご本人に苦痛を与えるだけでなく、ご本人をはじめご家族やスタッフ、医療機関等様々な協力が必要となる。これからも、褥創を発生させないように努めると共に、褥創をかかえる利用者へご本人にとって有益な新たな処置法を提供できるよう、日々研鑽を重ねて行きたい。 |
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