ID:A01794-00020-10568 |
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17-第16-J9-1
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わずらわしさ解消!中粘度栄養食を導入したPEG管理
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○高田哲也1,川口俊子1,川窪昌彦1,内城好美1 (1介護老人保健施設 オキドキ)
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【はじめに】 経口摂取不可能となった高齢者には別の栄養療法を考えなければならない。その方法のひとつとして「腸が働いているなら、腸を使おう!(丸山道生 経腸栄養バイブル)」という考え方から、経腸栄養が適応されている。介護老人保健施設での経腸栄養の管理は不可欠なものとなってきており、当施設でも平成26年4月現在で3名の入所利用者がいる。経腸栄養の方法は様々あるが、当施設では平成25年度全国老健大会Lunch on Seminerにて、水野英彰氏の「老人介護施設における長期PEG管理の工夫-新たなる経腸栄養投与法「自然落下法」-」と合田文則氏の「半固形化栄養食の現在と今後」の2講演を受講した後、液体をゆっくり滴下する方法から短時間で胃内に栄養剤を注入する方法を導入した。その結果、導入当初の予測以上の成果が得られたため、ここに報告する。本稿では胃瘻とその造設された器具を総称して「PEG」と表現する。 【期間】 平成25年10月~平成25年4月 【目的】 1.液体栄養剤症候群の防止。 2.イルリガートルや栄養セット使用時の細菌感染防止。 3.短時間での投与により、利用者およびスタッフの拘束時間短縮。 【方法】 1.期間中入所のPEG造設者3名の対象者に短時間注入法を導入。 2.利用者とその家族同意の下、栄養剤選択と変更。 3.採血データや体重、BMIにて身体の状態観察。 【対象者概要】 1) W氏。83歳男性。器械的嚥下障害から20FrセーフティーPEGチューブ式造設。 平成24年3月22日入所。要介護度2。旭化成のL-6(200Kcal)1日8本を1回1時間かけて投与していた。 日常生活においてチューブが邪魔になることから同年10月2日エンドビブボタンII20Fr3.5cmへPEG変更交換。 平成25年10月18日よりW氏同意の下、1日F2-ライト400Kcal(テルモ)×3本、F2ショット200Kcal(テルモ)×1本へ変更開始。 10月19日より手押し法自立支援指導開始。 2) H氏。91歳女性。慢性硬膜下血腫後の嚥下障害にてインディアルボタン24Fr4.0cmのPEGを造設して平成25年7月6日入所。 要介護度5。旭化成のL-6(200Kcal)を1日6本、1回1時間かけて投与していた。 入所当時よりPEG周囲の炎症所見あり。認知症があり、PEGを自己抜去する可能性があるため、栄養剤注入中は常に観察が必要。 平成25年10月2日より家族同意にて1日F2-ライト400Kcal(テルモ)×3本へ変更。 平成26年1月15日エンドビブボタンII24Fr4.0cmへPEG変更交換。 3) Y氏。83歳女性。脳梗塞による四肢麻痺と失語症から嚥下障害併発。インディアルボタン24Fr3.0cmのPEG造設後入所。要介護度4。 朝はクリニコのE-7II(500Kcal)、昼と夕はクリニコのMA-R2.0(500Kcal)を各1本を投与していた。 入所時より家族同意にて1日F2-ライト400Kcal(テルモ)×3本へ変更。 【結果・評価】 1) 排泄状態 H氏:下痢が改善され、便秘傾向となる。平成26年4月現在、ラキソベロン5滴/日内服中。 W氏:酸化マグネシウム3g/日やアローゼン屯用で排便コントロールをしていたが、便秘傾向が改善され酸化マグネシウム1g/日へ減量となった。 2) 拘束時間の短縮 W氏:元々認知症がなく、PEGの管理以外自立したため、短時間注入法に変えてからは注入における拘束時間が短縮され喜びの声が聞かれた。 H氏:手押し法や加圧バッグ使用で5~10分ほどで終了するので、注入中の観察に要するスタッフの拘束時間も短縮した。 Y氏:家族は入所当時より離床を希望しており、栄養剤注入による拘束時間を懸念していた。しかし、短時間となることで家族より感謝の言葉が聞かれた。 3) 栄養状態 採血データからW氏、H氏共に総蛋白、アルブミン値は経過良好。入所前から低値を示していたY氏は低め安定。 空腹時血糖値はインスリン注射を使用しているY氏を除き安定。電解質は変更後、3名とも安定している。 体重は、Y氏に増加傾向が見られたが、3名ともBMIは正常範囲内で推移している。 4)予測外の成果 PEG管理が原因で外出泊ができないW氏であったが、自分で注入したいと要望があり、手技を指導した。 現在では内服薬を溶いたものと、フラッシュ用の微温湯を入れたカテーテルチップと、暖めた栄養剤を用意しW氏へ渡している。 W氏は鏡を使いチューブを装着し、手押し法によりフラッシュに至るまで15分程で、特にトラブルなく注入完了できており外出泊が可能となった。 またH氏のPEG周囲の炎症所見はなくなった。 【まとめ】 短時間注入法を導入するにあたり、施行するスタッフへの指導が必要であったが、操作が簡便なため導入はスムーズで、利用者でも扱えるという効果も得られた。手押しによる操作に手が取られるという声には、加圧バッグを使用することで対応することができた。器具の洗浄も容易で、PEGによる感染症の発生はない。テルモ製品はディスポーザブルのため高価というデメリットがあるが、時間短縮というメリットだけではなく、便秘傾向の改善や炎症症状の改善にも効果があると共に、何よりもご本人のデマンズにも応えられ、短時間注入法は有用と考える。これからも、PEG増設していても自分らしい生活を送っていただけるよう、当施設ではこの方法を推奨していきたい。 |
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