ID:A01794-00020-10671 |
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17-第14-A24-4
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身体拘束に対する意識の定着を目指して
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○西田学1,高野秀明1,佐々木昌弘1,須田明敬1 (1介護老人保健施設 ウイング)
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【はじめに】 当施設、介護老人保健施設ウイングは東京都府中市に平成11年11月に開設した、入所定員、一般棟100名、認知症専門棟40名、通所定員40名の施設である。当施設では “人と社会のケアを通じて、健やかな未来社会を創造する”という法人の組織理念に基づき、これまでに様々な取り組みを行い、現場のケアサービスに反映してきた。 身体拘束廃止委員会は、平成24年8月の大きな委員会再編後、体制が変わることなく、その名の通り身体拘束廃止を基本とした活動を行ってきた。 その2年間に渡る地道な活動と得られた成果について報告する。 【経緯】 以前より、内部研修資料の作成や内部研修の主催、委員会では判断が難しい事例について、東京都高齢者権利擁護センターへ確認するなどして基準作りを進め、また内部研修資料に反映し、勉強会を主催するなど、周知に向けた活動を行ってきた。しかし、それらの活動で、果たしてスタッフに周知させることができているのか、正直な疑問であった。 平成24年度、「委員会活動の充実」という事業所ミッションを受け、大きな委員会再編活動として、立候補制による公募活動を通して集まった新委員会では、身体拘束廃止に向けたケア(身体拘束を行わないケア)を実践するには、「まずは正しい認識や対応をスタッフへ周知させる必要があるのでは?」という観点から、「身体拘束に関する正しい認識・対応を浸透させる」という目標を掲げ、その達成に向けて、具体的な行動計画をたてて、活動を行った。 【活動と経過】 ◎平成24年度 8月:委員会再編。新しいメンバーでの活動開始。 9月:まずは委員が知識を身につける必要性から、委員に向けた内部研修を実施。 10月:「これって身体拘束なのだろうか?」と、日々、介護を行う上で疑問に感じる事例について、委員がスタッフより収集。 11月:疑問事例を一覧にまとめ、各委員より意見を持ち寄り検討し、委員会としての見解を決定。並行して、委員3名が、外部研修(全国抑制廃止研究会)参加。 12月:内部研修へ向けて資料作成開始。考え悩むことで、知識を確実に身につけ、スタッフに知識や対応を周知できる状態(スタッフからの疑問にも確実に回答できる)にする目的で、フロア介護スタッフの委員が講師を担当。 3月~4月:内部研修実施。講義形式での勉強会を2回開催し、参加できなかったスタッフ対象に資料を配布。研修に対するアンケートを実施。 ◎平成25年度 前年度の活動をふまえ、目標は継続し、具体的な活動内容の充実化を目指し、「基準や知識については何もしなければ常に記憶しているというのは難しいのでは?」「常に疑問を感じて考え続けることが必要なのでは?」という視点から、委員が、毎月交代で、事例検討や問題を出題し、翌月に結果や委員会の見解を委員会掲示スペースへ掲示する、という啓蒙活動を展開し、計6回実施した。 5月~10月:啓蒙活動実施(ミーティングでの事例検討、穴埋め問題配布、写真使用しての事例検討配付)。考えてもらう事が目的で明確な回答が無い事例も出題した。また、当初、フロア介護と看護、相談員を対象としたが、リハビリやデイケア担当スタッフも自発的に参加。 11月:身体拘束廃止マニュアルや身体拘束フロー、確認書(説明書)書き方見本などの各種書類の作成開始。 12月:5月~10月に行った啓蒙活動についてアンケート実施。 1月:内部研修資料作成。 2月~3月:内部研修実施。講義形式で3回開催し参加できないスタッフへ資料を配布。 【活動全般を通して得られた反応や成果】 平成24年度の疑問事例収集では、特に認知症専門棟より、「スピーチロック」に対する疑問が多数寄せられ、スタッフが日々、ケアに対し悩んでいる事と関心の高さが感じ取られ、活動の枠を権利擁護全般に広げる必要性を考える機会になった。 平成25年度の啓蒙活動に対するアンケートからは「考える良い機会になった」「意識が向上した」「勉強になった」という意見が多数寄せられる一方「委員会として正解を明示して欲しい」という意見も多く、スタッフが委員会に対し、身体拘束に関する疑問への明確な見解や解答を求めていることが認識できた。前年まではあまり目立たないマニアックな事を地味に検討している委員会と認識していたが、年末のがんばった大賞にて、この2年間の活動を現場スタッフに評価された事は、大きな励みになった。 委員会再編前の平成23年度(4~3月)の身体拘束実施対象者は5名、平成24年度は1名であり、平成25年度は、開設以来初の、年度0名を達成することができた。利用者層の変化もあった中だが、2年間に渡る、委員会の地道な活動が、徐々に浸透し、スタッフの意識向上に作用し、現場スタッフ一人ひとりが努力した成果であると思う。 今後も、活動で得られた経験や知識を基に、可能な限り、身体拘束ゼロを目指していきたい。 |
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