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第33回全国介護老人保健施設大会 兵庫

本人と家族の希望が叶うターミナルケアを目指して

○上地信太郎1,田窪良佑1,小田渥美1,谷田薫1,北垣内真由美1,矢野道子1

1介護老人保健施設ステップハウス宝塚)

"【はじめに】ステップハウス宝塚は設立27年目のベッド数84床、うち個室2室、2人部屋17室、4人部屋12室からなる超強化型老健である。従来より在宅復帰支援に力を入れてきたが、近年看取りの要望が多く聞かれるようになったため、コロナ禍で取り組んだ2例のターミナルケアについて発表する。【目的】従来型個室、多床室でのターミナルケアについては課題が多く、積極的な導入には批判的な意見もあった。しかし、近年多様な看取りの場の選択が注目されるようになり、当施設での看取りを希望する利用者家族も増えてきたため、実践した事例を振り返り今後の対応の幅を広げていく。【方法】まずは体制づくりとして、「看取りに関しての指針」と「看取りマニュアル」の見直しを行った。同時に入所時確認書類である「ご家族様の連絡先と延命治療等についての確認書」の見直しを行い延命治療や栄養管理についての本人、家族の意向をより詳細に確認できる書式に変更した。次に職員への研修として、同法人で看取りを数多く経験している訪問看護ステーションから経験豊富な看護師を講師として招き、人生の最期をどこで過ごしたいか、本人の望みや家族の望みは何か、老衰とはどんな状態か、最期のときが近づいた時に訪れる変化、最期は無理に吸引や点滴をせず自然にしている方が楽な場合もあること、エンゼルケアの方法、家族への状態報告のタイミング、グリーフケアなどを学ぶ機会を設けた。 全身状態が悪化し急性期病院へ受診しても入院治療を要する状態ではなく、今後の生活の場をどこにするかというターニングポイントの発信は主に看護師が行い医師に報告の上、施設ケアマネジャーが窓口となり家族面談の場を設定した。その場には多職種が参加し施設医からターミナル期の説明と各専門職種からの状態報告を行い、同時に本人と家族の意向確認を行った。 当施設での看取りを希望された利用者家族には、改めて面談日を設定し「当施設における医療体制の説明書」を作成し老健施設で提供できない医療があることや死亡確認が翌日になる場合もあることなどを説明した。また「ターミナルケア加算についての同意書」にて利用者家族に負担していただく加算、エンゼルケア、死亡診断書作成料などの費用を説明し、施設での看取りをまとめたパンフレットを手渡した。【結果】2021年度下半期、当施設での看取りを希望した利用者は2名であった。(Y氏)87歳女性、要介護5、主疾患:レビー小体型認知症、パーキンソン病。(M氏)83歳男性、要介護5,主疾患:アルツハイマー型認知症、胃癌全摘。Y氏のキーパーソンは市内在住の長男夫婦であったが、東京在住の次男との関係性も良好で両者より「痛みを伴う治療はさせたくない、できるだけ長くここ(当施設)で過ごさせてやりたい」という家族の意向と、元気な頃より本人が延命治療を希望しないと家族へ意思を伝えていた。本人からの自発的な発語はなく明確な意思確認は困難であったが、代弁者として家族より「母はクリスチャンなので讃美歌を枕元で聞かせたい」「マリア像をそばに置きたい」という希望があった。持参されたSDカード収録の讃美歌を病床で流しマリア像を居室に設置。管理栄養士、言語聴覚士も介入しできるだけ口からの食事摂取を試みたが、嚥下困難となり誤嚥性肺炎のリスクが高くなったため、経口摂取を中止し医師の指示のもと状態をみながら適宜点滴を実施。口腔乾燥がひどく口腔内出血や喀痰が貯留するようになり、歯科衛生士から口腔内保湿方法の指導を受け口腔ジェルを活用し、必要最小限の吸引を行った。徐々に意識が薄れるようになり入眠時間が長くなり点滴ルート確保も困難になったため点滴終了したが、亡くなる2日前まで苦痛症状見られず、最期の日午後より努力様呼吸が見られ家族に連絡後スタッフに手を握られ静かに眠るように亡くなられた。家族は臨終に10分程間に合わなかったため、その瞬間の様子を丁寧に伝えた。家族と対面後エンゼルケアを実施、褥瘡もなく綺麗な状態だった。家族から「讃美歌の流れる中、穏やかに母の望むとおりの最期でした。満足していると思います」との言葉を頂いた。M氏のキーパーソンは次男、長年連れ添った妻も愛情深く寄り添っていた。急性期病院から栄養不良による老衰と診断を受け、当施設での看取りを希望された。胃全摘の影響もあり経口摂取量は極端に少なく栄養補助食品を付加し栄養維持を試みてきたが改善の兆しなく衰弱が進行していった。妻より「お酒の好きな人だから一口のませてあげたい」という思いと「毎日会いたい」という希望を聞き取った。コロナ禍で兵庫県下では緊急事態宣言も発令されており緊張感の高い状況ではあったが、手洗い消毒後、サージカルマスク、フェイスシールド、ビニール手袋、ガウン着用の上、ベッドサイドまでの対面面会を許可し亡くなる前1週間ほぼ毎日面会の希望に応じた。また、持参された日本酒をアイス綿棒にして妻から本人の唇に当ててもらい香りを楽しんでもらった。安静目的で保清は清拭としていたが、頭髪の汚れや皮膚落屑が著明であったため、家族に入浴のリスクを伝えた上で同意を得て機械浴を実施した。入浴の4日後に徐脈となり静かに亡くなった。臨終時に家族は間に合わなかったが、「まだ温かい。毎日会ってたから、生きてるみたいにきれいな顔です」と言われ繰り返し感謝の言葉を述べられた。【まとめ】ターミナルケアを実施していく中で、最期の日の職員の動きやコロナ禍での葬儀会社の対応、担当フロア看護師不在時間の対応などの課題、多職種間の意見の相違などが見えてきた。利用者毎のフローチャートを作成し事前に葬儀会社へ連絡を入れお見送り方法の調整も行ったが、全職員に振り返りアンケート調査を行った結果、多職種間の意見交換と詳細の課題抽出に沿った個別化した対策の立案が必要であると感じた。"

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