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パーキンソン病患者に対する鍼治療の1例
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○山賀真知子2,福田晋平2,江川雅人2 (1明治国際医療大学大学院 臨床鍼灸学専攻,2明治国際医療大学 加齢鍼灸学教室)
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【症例】75歳男性。主訴:歩行困難。現病歴:70歳時より右上下肢の安静時振戦が出現し、パーキンソン病(PD)と診断された。薬物治療により振戦は軽減したが、73歳時からすくみ足、突進現象を自覚するようになり、本学附属鍼灸センターを受診し、鍼治療を開始した。現症:歩行には杖を必要とし、すくみ足が認められた。振戦は他覚的には認められなかった。筋強剛は右上下肢に軽度認められた。H-YはIII度と判定した。第7~12胸椎位の脊柱起立筋に緊張を認めた。鍼治療:肝腎陰虚証と弁証し、滋補肝腎、滋陰清熱を目的に曲池、合谷、気海、太渓、太衝、肝兪、腎兪を、下肢の筋緊張緩和を目的に風市、伏兎、梁丘、血海、足三里、陰陵泉、殷門、承山を配穴し、鍼響後10分間の置鍼術を行った。下肢の運動性の改善のため伏兎-足三里に2Hz10分間、体幹部の運動性の改善を目的に腎兪-大腸兪に5Hz10分間の低周波鍼通電を行った。鍼治療の頻度は週1回とした。評価方法:PD症状は専用評価法であるUPDRS、QOLは専用評価表であるPDQ-39で評価した。評価は半年毎に行った。 【結果】26ヶ月28日間に113回の鍼灸治療を行った。治療14診目より、時に杖を浮かせて歩くようになり、24診目からは杖なしでの歩行が可能となった。37診目頃より囲碁や旅行をするようになったが、長時間座位や長距離移動には疲労を伴った。しかし、95診目、97診には、不便や疲労感なく旅行が出来た。UPDRSでは38(初診時)→40(61診時)→27(75診時)→16(96診時)とPD症状の改善がみられ、特に運動能力の改善が認められた。PDQ-39は43→71→42→25とQOLの向上が示唆され、特に「運動能力」「日常生活」で向上が認められた。 【考察】PDにおける歩行困難の発症機序は明瞭ではないが、弁証論治と鍼治療による体幹部の運動性の改善が、症状の軽減につながったと考えられた。また、UPDRS値やPDQ-39値の低下から、PDとしての改善が示唆された。 |
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