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抑うつを伴った血管性パーキンソニズムに対する鍼灸治療の1例
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○太田和宏1,江川雅人1,松本勅1,矢野忠2,山村義治3,苗村健治3 (1明治国際医療大学 加齢鍼灸学教室,2明治国際医療大学 健康・予防鍼灸学教室,3明治国際医療大学 内科学教室)
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【目的】血管性パーキンソニズムは高血圧による微小な脳梗塞が原因とされる症候性パーキンソニズムの1つで、時に抑うつを併発し、QOLの低下を招く。鍼灸治療により症状軽減とうつ状態の改善を認めた血管性パーキンソニズムの1例を報告する。【症例】78歳女性。主訴:動作緩慢、食欲不振、不眠。現病歴: 77歳時に動作緩慢、食欲低下、不眠、便秘などの症状が生じ、血管性パーキンソニズムと診断されたが、降圧剤以外の薬物治療を受ける事はなかった。パーキンソン病に対する鍼灸治療を知り、明治国際医療大学附属鍼灸センターへ来院した。所見:身長146.0cm、体重33.0kg。1年半年間に4.0kgの体重減少。見当識障害を認めず。パーキンソン症状として前傾姿勢、安静時振戦、動作緩慢を認めた。Hoehn-Yahr重症度分類II度。食欲不振、不眠、難聴を認めた。高齢者うつスケール(GDS:30点法)で21点とうつ状態にあると考えられた。鍼灸治療:腎虚証、肝鬱気滞証との弁証により内関、合谷、三陰交、太谿、太衝、肝兪、腎兪を選穴、40mm16号鍼を用い10分間の置鍼術または温筒灸を行った。治療頻度は1回/週とした。【結果】5ヶ月間に20回の鍼灸治療を行った。初回治療直後に難聴が改善し、治療2回目には表情は朗らかになり、気分の改善が認められた。治療5回目からは食欲が改善し、夜間覚醒が減少した。健康調査票による初診時、治療10回目、20回目のVAS値は身体の動き:50→86→75、食欲:51→84→100、体重は37.0kgにまで増加した。睡眠:52→53→74と改善した。GDS値は13点に減少した。【考察と結語】本疾患では抑うつが予後に与える最大の因子であり、本例では鍼灸治療により動作緩慢と共にADLや抑うつの改善が認められた。本症例において鍼灸治療は有効であったと考えられた。 |
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