ABSTRACT 715(P1-2)
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各種ピリミジンダイマーの立体構造と電子構造についての理論的考察: 相田美砂子、井上富貴子、金子元久(国立がんセ・研・生物物理)

A Theoretical Study on Pyrimidine Dimers: Misako AIDA, Fukiko INOUE, Motohisa KANEKO (Biophysics Div., Natl. Cancer Center Res. Inst.)

[目的] DNAの光照射によって、ピリミジン間に二量体(ピリミジンダイマー)が形成される。ピリミジンダイマーは、DNAの複製過程の障害となり突然変異を引き起こしうる。ピリミジンダイマーのうちでチミンダイマーについては、その立体構造および電子構造における特徴、およびそのラジカルカチオンを経由する解裂反応のメカニズムについて以前報告した。ここでは他のピリミジン間で生ずる各種ピリミジンダイマーの立体構造および電子構造における特徴を明らかにする。
[結果・考察]非経験的分子軌道法を用いて各種ピリミジンダイマーおよびそのラジカルカチオンの構造最適化を行った。その結果、各種ピリミジンダイマーにおいては、チミンダイマーと同様に、C6-C5-C5'-C6'の四員環は平面ではなくpuckering form をとっていることが見い出された。チミンダイマーの場合は最高被占軌道への C6-C6'結合の寄与が大きい。したがってラジカルカチオンではこの結合が伸びて弱くなり、その解裂反応は C6-C6' 結合の解裂から始まる。ところが、シトシンを含むピリミジンダイマーのラジカルカチオンにおいてはスピンは主にシトシンの N3 原子上に存在することが見い出された。このような場合の解裂のメカニズムは、チミンダイマーの場合とは異なることが予想される。