ABSTRACT 726(P1-4)
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MNU誘発キメラマウス腺胃腫瘍の組織発生と発育進展形式の検討:吉川朱実1, 2,山本昌美1,深見博子1,清水伸幸1,2,倉本秋2,上西紀夫2,立松正衞1(1愛知がんセ・研・1病理,2東大・消化管外)

Development and growth patterns of chimeric mouse glandular stomach tumors induced by MNU: Akemi YOSHIKAWA1,2,Masami YAMAMOTO1,Hiroko FUKAMI1,Nobuyuki SHIMIZU1,2,Shu KURAMOTO2,Michio KAMINISHI2,Masae TATEMATSU1(1Lab. of Pathol., Aichi Cancer Cent. Res. Inst.,2Dept. of Gastrointestinal Surg., Univ. of Tokyo)

(目的)我々は N-methyl-N-nitrosourea (MNU) 飲水投与により, マウスにヒト胃癌類似の種々の組織型を呈する腺胃腫瘍を誘発する方法を確立した. 今回同法を用い, キメラマウスに分化型および未分化型腺胃腫瘍を作成し, 抗C3H系統特異抗体 (CSA) および粘液・免疫組織学的細胞分化マーカーを用いて腫瘍の組織発生と発育進展形式を検討した.(対象と方法)7週齢のC3HとBALB/cおよびC3HとC57BL6のキメラマウスにMNU 240ppmを10週間にわたり隔週で(計5週間)自由飲水投与し、投与開始より52週で屠殺した. 肉眼的観察の後, 腺胃を全割し、腫瘍の連続切片に対し, HE, CSA, AB-PAS, ConA III, Pg 1の各種染色を施行し, 鏡見, 検討した.(結果と考察)腫瘍は幽門腺領域に好発し, ヒト分化型および未分化型胃癌に類似する多彩な組織型が観察された. 腫瘍細胞には種々の程度で発生母地である胃上皮細胞の分化形質の残存が見られ、粘膜内で非癌部幽門腺粘膜を模倣する層状の分化傾向が認められた. 腫瘍はCSA陽性あるいは陰性細胞のいずれか一方より構成されるものの他に, 両者の混合する例もあり, 複数のクローンの衝突あるいは相互作用の可能性が示唆された. 未分化型腫瘍では癌細胞は基底膜をもたずに粘膜固有層に浸潤性に進展し, 一方, 分化型腫瘍では基底膜をもつ腫瘍腺管のbuddingによる膨張性発育および既存の正常腺管の基底膜を利用する置換性発育形式が見られた. マウスを用いた本系はヒト胃癌の発生と進展を考察するうえで有用な実験系と考えられた.