ABSTRACT 737(P1-5)
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ハムスターを用いた誘発胆嚢癌における胆汁酸と膵酵素の影響:小野 滋,常盤 和明,岩井 直躬 (京都府立医大・小児研・外)

Effects of bile acid and trypsin in gallbladder carcinogenesis by intracholecystic 3-methylcholanthrene pellets in hamsters: Shigeru ONO, Kazuaki TOKIWA, Naomi IWAI (Division of Surg., Child.Res.Hosp., Kyoto Pref. Univ. of Med.)

【目的】膵胆管合流異常症では膵液の胆道内への逆流と胆汁うっ滞の相互作用により胆道上皮の発癌に至る変化が生じてくると推測される.本症における発癌機序を解明する目的で,胆嚢癌の発癌モデルをハムスターを用いて作成し,その発癌過程における胆汁酸及び膵酵素の影響を検討した.【材料と方法】8週齢雌のgolden hamsterを用い,発癌剤 3-methylcholanthrene(MC)3mgを混合したbeeswax pellet (BW) 10mgを,胆嚢内に挿入した.ハムスターをMC単独群(I群 n=8),胆汁酸添加群(II群 n=10),胆汁酸及びtrypsinを混入したポリエチレングリコール(PEG)添加群(III群 n=9)の3群に分け,市販の固形食及び水道水にて5ヶ月間飼育した後,屠殺,剖検し,腫瘍の発生状況を検索した.BWのみを挿入した群(IV群 n=6)を対照群とした.HE染色にて腫瘍及び胆嚢の組織学的検索を行い,免疫染色を用いてp53蛋白の発現を検索した.【結果】胆嚢癌の発生率はI群62.5%, I群80.0%, III群88.9%で,平均腫瘍重量は各々140.33, 528.44, 4251.28mgであった.対照群には腫瘍の発生は認めなかった.組織型別ではI群では全例が乳頭腺癌で,内2例は中分化型管状腺癌を合併していた.他の3例も胆嚢粘膜の異型性変化を認めた.II群では乳頭腺癌7例,高分化型管状腺癌3例で2例は両者が混在していた.III群は乳頭腺癌3例,中分化型管状腺癌4例,未分化型管状腺癌1例で,管状腺癌は間質成分の多い硬性癌で強い浸潤性を認めた.p53蛋白の発現率は発癌症例中では群間差はなく,非発癌例ではすべて陰性であった.【結論】ハムスターを用いた胆嚢発癌実験において,胆汁酸を添加した群,さらにPEGを用いtrypsinを添加した群で腫瘍発生率が高く,平均腫瘍重量も大きかった.このことより胆汁酸は発癌促進作用を有しており,膵液はその発癌作用をさらに促進させることが示唆された.