ABSTRACT 739(P1-5)
ハムスター膵管癌発生過程におけるマトリックスメタロプロテイナーゼの関与:伊木勝道, 堤 雅弘, 辻内俊文, 城戸 顕, 吉本雅俊, 本山晶章, 辰巳邦彦, 小西陽一(奈良医大・がんセ・腫瘍病理, 大塚製薬藤井記念研究所)
The role of matrix metalloproteinases for pancreatic carcinogenesis in hamsters:Katsumichi IKI, Masahiro TSUTSUMI, Toshifumi TSJIUCHI,Akira KIDO, Masatoshi YOSHIMOTO, Masaaki MOTOYAMA, Kunihiko TATSUMI, Yoichi KONISHI (Dept. of Oncol. Pathol., Cancer Center, Nara Med. Univ. Osuka Pharmaceutical Co.Ltd.)
(目的)膵癌は予後不良な難治性癌の代表的なものであることより、膵癌の予防、治療法の開発のため膵癌進展の分子機構を解明することは重要な課題である。今回、我々はヒト膵管癌の実験系であるハムスター膵発癌系において、matrix metalloproteinases (MMPs)の膵癌の発生および進展過程に対する役割を明かにするため、膵癌および前癌病変におけるMMPsおよびtissue inhibitors of MMPs (TIMPs)の発現とMMPs阻害剤の膵発癌抑制効果について検索した。(材料および方法)ニトロサミンにより誘発したハムスター膵癌についてMMP-2および9、TIMP-1および2の遺伝子発現をノザン解析にて、また前癌病変におけるMMP-2の発現を免疫組織化学染色にて検索した。さらに、短期膵発癌実験系において前癌病変が発生した時期よりMMPs阻害剤であるOPB3206をハムスターに投与し膵発癌修飾作用を検索した。(結果および考察)正常膵に比較して膵癌ではMMP-2および9、TIMP-2 mRNAの過剰発現がみられた。MMP-2染色の結果、膵管上皮の過形成、異型過形成、膵管内癌、浸潤癌と病変が進展するにつれMMP-2発現が強くなる傾向がみられた。また、OPB3206を投与したハムスターでは対照群に比し浸潤癌の発生個数の有意な減少がみられた。以上の結果よりハムスター膵癌の発生および進展にMMPsが関与すること、MMPsを標的とした膵癌の化学予防の可能性が示唆された。