ABSTRACT 740(P1-6)
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Dimethylnitrosamine(DMN)腎発癌に対する2-amino-4,5-diphenylthiazole(DPT)誘発ラット嚢胞腎の影響:池田佳久, 高橋 智, 織田信一郎, 二口 充, 小川久美子, 白井智之(名市大・医・1病理)

Effects of 2-amino-4,5-diphenylthiazole (DPT)-induced polycystic kidneys on dimethylnitrosamine (DMN)-induced renal carcinogenesis in rats : Yoshihisa IKEDA, Satoru TAKAHASHI, Shin-ichiro ORITA, Mitsuru FUTAKUCHI, Kumiko OGAWA and Tomoyuki SHIRAI (1st. Dept. Pathol., Nagoya City Univ. Med. Sch.)

【目的】長期透析治療を受けている患者において,後天性嚢胞腎が高率に観察され,これらの病変では腎腫瘍の合併が高頻度に認められている.今回我々は嚢胞腎が腎腫瘍の発生母地として危険因子になりうるか否かを検討した.【方法】6週齢のWistar系雄ラットに実験開始時より1群:25ppm DMN,2群:10ppm DMN,3群:25ppm DMN+1% DPT,4群:10ppm DMN+1% DPT,5群:1% DPTを投与し,6群は基礎食対照群とした.実験は30週で終了した.【結果】実験30週時の生存率は,1〜6群でそれぞれ6/12, 4/12, 0/12, 8/12, 11/12および11/11例で,24週以上生存した動物を有効匹数とした.DPTを投与したすべてのラットに嚢胞腎が観察された.上皮性腫瘍の発生は1〜4群においてそれぞれ6/9,0/11,4/4,2/11例で,1匹当たりの発生個数は1, 3, 4群で1.22,3.00,0.18と,1群に比較して3群で有意な増加が認められた.間葉性腫瘍の発生は3および4群にみられ,それぞれ3/4,1/11例と3群で有意な増加(vs 1群)がみられた.腎尿細管上皮ではPCNA陽性率が4群で有意に増加し(vs 2群),DMNの代謝活性化酵素であるCYP2E1の発現増加がDPT投与群で免疫組織学的に観察された.【結論】DPTにより誘発した嚢胞腎はDMN腎発癌を促進し,その作用機序として尿細管上皮細胞の増殖およびDMNの代謝活性化の促進が示唆された.現在,DMN腎発癌と嚢胞腎の関連性についてさらに検討を進めている.