ABSTRACT 742(P1-6)
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ウラシル結石誘発膀胱腫瘍発生の機構解明:Big BlueRラットを用いた突然変異の解析: 高橋 智1, 池田佳久1, 木本直哉1, 崔林1, 大河内江里子2, 牛島俊和2, 長尾美奈子2, 白井智之11名市大・医・1病理、2国立がんセ・発がん)
 
Analysis of lac I gene mutations in Uracil-induced bladder lesions of Big BlueR rat: Satoru TAKAHASHI1, Yoshihisa IKEDA1, Naoya KIMOTO1, Lin CUI1, Eriko OKOCHI2, Toshikazu USHIJIMA2, Minako NAGAO2, Tomoyuki SHIRAI1 (11st. Dept. Pathol., Nagoya City Univ. Med. Sch., 2Carcinogenesis Div., Natl. Cancer Center Res. Inst.)

[目的]非変異原物質であるウラシルは高濃度でラットに投与すると膀胱内に結石を形成し、乳頭腫症を経て膀胱癌を発生することが知られている。そこでin vivo突然変異検出系であるlac I遺伝子を標的遺伝子として導入したBig BlueRラットを用いてウラシルのin vivoにおける変異原性を検討した。[方法]6週齢の雄Big BlueRラットに3% ウラシルを50週間混餌投与し、その後は基礎食にて飼育した。その間経時的に屠殺し膀胱を採取した。50週以後は膀胱腫瘍の確認されたラットは屠殺し、60週時点で生存ラットはすべて屠殺剖検した。採取した膀胱上皮よりDNAを抽出し、lac I遺伝子をラムダファージにin vitro packagingにより回収後、プラークアッセイにより突然変異頻度(mutation frequency, MF)を算出した。[結果]ウラシルを投与したラットでは2週目には膀胱乳頭腫症が観察され、50週以後に屠殺した動物ではすべての症例で膀胱癌の発生が認められた。対照ラットの膀胱では0および60週時点におけるMF(×10-6)はそれぞれ8.61, 2.73であった。それに対しウラシル投与群では2週後の乳頭腫症では4.85、51週時点の移行上皮癌およびその周囲の非腫瘍性粘膜ではそれぞれ41.75、14.16であり、後者では正常対照に比して増加傾向はあるものの有意な差はみられなかった。[結論]以上の結果からウラシルはin vivoにおいて変異原性を示さないことが明らかとなり、ウラシル誘発膀胱発がんにはepigenetic なメカニズムが関与している可能性が考えられた。