ABSTRACT 819(P1-11)
 ポスターセッション一覧 トップ 


腎細胞癌誘発性鉄錯体、鉄ニトリロ三酢酸 (Fe-NTA) の急性障害に関する NO の関与:秋山 隆, 江口 香, 川端晃幸, 岡田 茂(岡山大・医・一病理)

Renal carcinogen, Fe-nitrilotriacetate (Fe-NTA) induced nitric oxide (NO) in mouse serum: Takashi AKIYAMA, Kaori EGUCHI, Teruyuki KAWABATA, Shigeru OKADA (1st Dept. of Pathol., Okayama Univ., Med. Sch.)

ラット、マウスに鉄キレート化合物である鉄ニトリロ三酢酸 (Fe-NTA) を中等量長期反復腹腔内投与を行うと、高率に腎細胞癌が発生する。Fe-NTA による急性障害は、抗酸化剤などにより抑制されることからも、鉄を触媒とするフリーラジカルによるものと考えられる。 近年さまざまな生理活性を有する物質として Nitric oxide (NO) が注目されている。酸化ストレスに対しての NO の発生は、障害を抑制するか、促進するかはっきりしない。Fe-NTA 単回投与時の急性毒性に関して、NO の関与を検討した。【方法】動物 ddY 雄性マウス 6-8 週令を主に使用。Fe-NTA は腹腔内投与。血清中の NO の代謝産物である NO2 を 2,3-Diaminonaphthalene を用いて蛍光検出を行った。対照鉄化合物として、急性毒性のない鉄サッカレート(コロイド鉄)と Desferrioxamine mesylate にキレートされた鉄 (Fe-Desf) を用いた。自由鉄はガタリッジ法を用いて測定した。【結果】1)Fe-NTA (7.5 mgFe/kgbw) を腹腔内投与すると、血清中の NO2 は 30 分後には有意に増加し、その後減少する。2)急性毒性を有しない Fe-Desf (7.5 mgFe/kgbw) 、コロイド鉄 (15 mg Fe/kgbw) を投与した場合、NO2 はほとんど増加しない。3)血清の NO2 と自由鉄は相関する。【考察】Fe-NTA 投与によって NO2 が増加することより、NO の産生が証明された。急性毒性のない鉄化合物では NO 産生は低くまた、生体傷害と関連する自由鉄との相関もあることより、Fe-NTA の急性毒性に関与することが示された。