ABSTRACT 822(P1-11)
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ハイポキシアで誘導される遺伝子の一酸化窒素放出試薬による転写抑制:十川和博,藤井義明(東北大・理・化学)

Transcriptional repression of the hypoxia-inducible genes by nitric oxide donors: Kazuhiro SOGAWA, Yoshiaki FUJII-KURIYAMA (Dept. of Chem., Graduate School of Science,Tohoku Uniersity)

一酸化窒素(NO)は生体にとって多彩な生物学的、病態生理学的作用をもっている。NOの反応性から生じるO2ラジカルやイオンが有害作用をもつと考えられているが、その分子機構はよく分かっていない。我々は、ハイポキシアにおいて、転写因子HIF-1によって調節される遺伝子の活性化を介した細胞の適応反応が、NOによって抑制されることを見出したので報告する。ヒト肝癌由来のHep3B細胞でのエリスロポイエチンやアルドラーゼA mRNAのハイポキシアでのHIF-1による誘導はNOドナーであるニトロプルシドナトリウム(SNP)によって阻害されたが、誘導されないGAPDH mRNAなどは阻害を受けなかった。Hep3Bにトランスフェクションした、Hypoxia-responsive element (HRE)をプロモーターにもつレポーター遺伝子のハイポキシアによる誘導をSNPは低濃度で阻害した。また同じくNOドナーであるS-nitroso-L-glutathione (GSNO), と3- morpholinosydnonimine (SIN-1) も同様に阻害した。この阻害は Neuro 2aと HeLa 細胞でも観察された。コバルトイオンは、ハイポキシアに良く似た作用を細胞にもたらすが、SNPはその活性化も阻害した。我々は、この阻害が、HIF-1αが活性化されてDNA結合活性をもつようになる段階での阻害であることを示す。