ABSTRACT 861(P2-3)
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HBs抗原陰性, HCV抗体陰性肝細胞癌におけるヒトHBV遺伝子組み込みの役割:松崎靖司1,佐藤巳喜夫1,斎藤吉史2,千葉俊也1,軽部真明1,田中直見1,波多間徹3,木下盛敏3(1筑波大学臨床医学系内科,2筑波メディカルセンター病院消化器内科,3大塚アッセイ研究所)

The role of Hepatitis B Virus Genome Integration in HBs Antigen Negative and Anti-HCVnegative Japanese Patients with Hepatocellular Carcinoma:Yasushi MATSUZAKI1,Mikio SATO1,Yoshifumi SAITO2,Toshiya CHIBA1,Masaaki KARUBE1,Naomi TANAKA1,Tohru Hadama3,Moritoshi Kinoshita3(1 Institute of Clinical Medicine,Tsukuba Univ.,2Tsukuba Medical Center.,3Otsuka Assay Labs.,Otsuka Pharma. Co., Ltd.)

[目的]我々はHBs抗原(B)陰性C型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性(C)肝硬変合併肝細胞癌(HCC)患者においてHBV-DNAがヒト遺伝子中へ組み込まれていることを報告した(Cancer Lett,119,1997)。B陰性HCV抗体陰性(NBNC)患者の発癌因子を検討する目的で、HBVDNA組み込み、TTV, HGVの肝発癌への関与を検討した。[対象及び方法]1)NBNC肝障害患者34例とNBNC肝細胞癌患者26例の背景因子の検討を行った。2)C-HCC16例とNBNC-HCC6例の癌部・非癌部のHBV遺伝子組み込み、癌部HGVRNA存在、さらに血中TTVについてPCRを用い比較検討した。[結果]1)NBNC群ではHCC群は慢性肝障害群に比して有意にHBV関連抗体陽性者・LCが多かった。一方、NBNC群におけるLC合併HCC患者26例中7例(26.9%)とC群のLCの相対危険率5.14(AJG1996)と比較して低率であった。2)HBV-DNAの組み込みをC-HCC群50%、非癌部43.8%、またNBNC-HCC群6例中癌部3例(50%)、非癌部3例(50%)に認めた。3)癌部へX遺伝子の組み込みがみられたのはC-HCC群3例(18.6%)、NBNC群2例(33.3%)であった。4)NBNC群において、5例中1例にHGVが存在した。さらに、5例中3例にTTVが存在していた。[結論]NBNC-HCC患者ではLCを背景としないものが多かった。一方、HBV遺伝子の組み込みはC群、NBNC群で差は認められなかった。HCC発癌に関してC群、NBNC群ともにHBVの過去の感染が関与している可能性が示唆された。さらにNBNC群においてTTV, HGV重複感染も今後検討せねばならないと考えられた。