ABSTRACT 870(P2-4)
C型肝炎ウイルスの細胞内での粒子形成過程の解析 :小原道法1、垣内雅彦2、脇田隆字1、小原恭子1、保井孝太郎3、渡辺省三2 (1都臨床研,2三重大,3都神経研)
ANALYSIS OF HCV MATURATION IN TRANSFECTED IMY CELLS WITH ENTIRE HCV GENOME: M.Kohara1,T.Wakita1,K.T.Kohara1,Y.Tanaka1,T.Ito2,K.Yasui2,Y.Matsuura3,M.Kaito4, S.Watanabe4. (1Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science, 2 Mie University School of Medicine,3Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience)
(目的)C型肝炎ウイルス(HCV)の複製過程、特に粒子形成成熟過程および細胞外への放出機構は全く明らかになっていない。本機構を解析するために、HCV全長遺伝子cDNAクローンを肝細胞で発現させ、ウイルス粒子成熟過程および細胞外への放出機序およびこれに関わる因子を解析することを目的とした。(方法)HCV全遺伝子のcDNAをT7プロモーターの下流に導入した発現ベクターをトランスフエクションした細胞に、T7RNAポリメラーゼ発現組換えアデノウイルスを感染させる事によりHCV蛋白質を発現させた。粒子形成の有無については免疫電子顕微鏡法により検討を行った。(結果)HCVcDNAを導入発現した細胞内の免疫電子顕微鏡による検討から、細胞質内に直径30ー35nmの内部に核酸を有するコア粒子様構造物の生成が認められ、小胞体内に50−60nmのウイルス様粒子が認められた。これらの粒子は抗コアおよび抗Env抗体と特異的に反応した。培養上清を蔗糖密度勾配遠心にかけ、分画のコア蛋白質量を測定したところ、1.05、1.10、1.25の密度にピークが観察され、免疫電子顕微鏡による検討から50−60nmの抗エンベロープ抗体と特異的に反応するウイルス様粒子が認められた。培養上清および患者血清の1.20-1.25の密度の分画を免疫電子顕微鏡により検討したところ生20面体の粒子構造が観察された。(考察)免疫電子顕微鏡により認められた細胞質内および培養上清中に存在する直径30ー35nmのコア様粒子構造物および50−60nmのウイルス様粒子はウイルス粒子の形成過程を示していると考えられる。得られた培養上清、及び細胞の中に感染性のウイルスが存在しているかどうか、またそれらの継代が可能かどうかについて検討を行っている。