ABSTRACT 873(P2-5)
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HTLV-I pXトランスジェニックラットの胸腺腫発生:菊地和徳1、池田仁1、田中敏1、菅谷寿晃1、富居一範1、脇坂明美1、吉木敬1 (1北大・医・第一病理) 

Development of thymoma in HTLV-I pX transgenic rats : Kazunori KIKUCHI1, Hitoshi IKEDA1, Satoshi TANAKA1, Toshiaki SUGAYA1, Kazunori FUGO1, Akemi WAKISAKA1, Takashi YOSHIKI1 (1Dept. of Pathol. Hokkaido Univ. Sch. of Med.)

 我々は前回、本学会においてリンパ球系のシグナル伝達に重要な役割をはたしているlymphocyte specific protein tyrosine kinase(p56lck)のタイプI プロモーターを用いてHTLV-IのpX遺伝子を強制発現させたトランスジェニックラット(lck-pXラット)を作製し、胸腺原発の腫瘍を高率に発生したことを報告した。胸腺腫は、抗ケラチン抗体陽性で形態的には紡錘形細胞主体のepithelial thymoma像を呈している。そのような胸腺腫では腫瘍の増大に従い、導入したHTLV-I pX遺伝子の発現が増強しており、さらに腫瘍を高率に発症する系統と発症率の低い系統との比較から、腫瘍発生の頻度がpX遺伝子の発現量の程度にある程度依存することが示された。また、腫瘍の発生率は世代を経るに従って亢進する傾向が有り、複数の系統で雄よりも雌の方が発症が低い傾向が見られた。現在、腫瘍発生に伴う免疫能の変化や胸腺上皮、リンパ球におけるpXの関与の違いなどについて検討中である。