ABSTRACT 875(P2-5)
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HTLV-I TaxによるE2F活性化機序の解析:大谷清,岩永律子,中村正孝(東京医歯大・疾患遺伝子)

E2F activation by HTLV-I Tax: Kiyoshi OHTANI, Ritsuko IWANAGA, Masataka NAKAMURA (Human Gene Sciences Center, Tokyo Medical and Dental Univ.)

細胞周期のG1期からS期への進行は、G1サイクリン及びサイクリン依存性キナーゼ(CDK)によって制御されている。この作用の少なくとも一部は、Rbファミリー蛋白質のリン酸化に伴う転写因子E2Fの活性化を介する。我々はヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-I) Taxによる細胞増殖促進作用の機序を解析するために、Taxの作用をヒトIL-2依存性T細胞株(Kit 225)を用いて検討している。その結果、Taxの発現が内在性のE2F活性を増強することによりさまざまなS期関連遺伝子のプロモーターを活性化することが明らかとなっている。そこでTaxによるE2F活性化の機序を調べる為にTaxの様々な変異体のE2F活性化能を調べたところ、NF-κB及びNF-AT活性化能と相関し、CREBおよびSRF活性化能とは相関しなかった。しかしNF-κB及びNF-ATの発現のみではE2F活性化は認められなかった。またTaxはCDK抑制因子p16と結合しその作用を抑制することが報告されているが、p16を発現しているラット線維芽細胞株REF52ではTaxによるE2Fの活性化は全く認められなかった。以上からTaxによるE2F活性化は上記以外の機序によるか、複数の機序の組み合わせによるものと予想された。