ABSTRACT 880(P2-5)
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HTLV−I感染における樹状細胞の関与−細胞培養系による解析:森川 茂,長崎真琴,鳥井郁子,森川景子1島根医大・1病理,2島根医大・1内科 )

Possible critical role of dendritic cells in HTLV−I infection−Analysis in cell culture systems : Shigeru MORIKAWA 1,Makoto NAGASAKI 1, Ikuko TORII 1, Keiko MORIKAWA 2 ( 1Dept. of Pathol. 1st Unit, 2 1st Dept. of Int. Med. Shimane Med. Univ. )

成人T細胞白血病(ATL)はHTLV−Tの生体内侵入からT細胞感染に引き続く白血病発症までの間に長い潜伏期間を要することが知られている。この最終的な標的細胞であるT細胞の白血病化を来す間に、免疫担当細胞をはじめとして種々の細胞の関与が考えられているが、未だ不明の部分が残されている。ウイルスと標的細胞を結びつけるものとして抗原提示機能を有する樹状細胞(DC)が近年注目されている。DCの機能は処理された抗原分子を効率よくT,B細胞膜上受容体に提示するものとされているが、その前段階にあたる抗原性物質の取り込みと処理に関してマクロファ−ジ(MΦ)の機能との関連が不明確であった。本研究ではヒト由来DC細胞株HBM−NodaとMΦの機能・形状を有するヒト由来細胞HPL−Hod−1細胞のHTLV−I感染感受性を試験管内感染実験系で検討した。さらにATL患者リンパ組織におけるDCおよびMΦの活性化状態を検索する目的で、ATL患者末梢血単核球あるいはリンパ節浮遊細胞を材料として培養系(RPMI−1640+10% ウシ胎児血清、径3cm ガラス製ペトリ−皿)に持ち込み、長期の培養(炭酸ガス培養器、37℃ )を行い培養細胞の形態的変化とモノクロ−ナル抗体によるHTLV−T抗原の発現を検索した。Noda細胞、Hod−1細胞はいづれもMitomycin C処理ATL 細胞株HPB−ATL−2細胞との混合培養やATL−2細胞由来ウイルス分画の添加により、HTLV−Iに感染感受性を有していた。しかし、患者末梢血及びリンパ組織細胞の培養において出現が顕著に認められたのはDC系列の細胞と考えられた。ATL 発症準備期の患者末梢組織においては、DCが重要な役割を担っていることが示唆された。