ABSTRACT 882(P2-5)
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ATL細胞におけるTCRシグナル伝達の構成的活性化:
福本理作1、竹内 一1、松岡雅雄2、山口一成2、渡邉俊樹1 (1東大・医科研・病理、2熊本大・医・2内)

Constitutive Activation of TCR Signalling Pathway in ATL Cells: Risaku FUKUMOTO1, Hajime TAKEUCHI1, Masao MATSUOKA2, Kazunari YAMAGUCHI2, Toshiki WATANABE1 (1Dept. Pathol., The Inst. Med. Sci.,The Univ. Tokyo, 22nd Dept. Intern. Med.,Kumamoto Univ.)

HTLV-1感染によるATLの発症は疫学的にWeibullのモデルに適合し、多段階発癌モデルが適用できる。我々はATLの発症機構の解析を目的に、腫瘍化過程で生じATL細胞に集積されている遺伝子の構造異常に付随する発現異常をDDAで解析してきた。これまでに得られた特異的発現を示すcDNA断片の中に、TCR下流のシグナル伝達に関与すると考えられる分子が複数存在していたことから、ATL細胞においてTCR下流のシグナル伝達に異常のあることが示唆された。そこで、我々はATL細胞におけるTCRシグナル伝達分子の発現と機能について、mRNAおよび蛋白質レベルでの発現と酵素活性に関して検討を行った。その結果、PKCbIIがmRNAおよび蛋白レベルで過剰発現を示し、酵素活性も構成的かつ著明に亢進していた。また、その上流に位置するTPKの幾つかに関しても特徴的な発現が見られた。これらの結果は、in vitroで樹立されたHTLV-1感染T細胞株あるいはTax不死化細胞株では全く認められず、ATL細胞と明確に区別された。以上の結果から、 ATL細胞におけるTCR下流のシグナル伝達系の構成的活性化が多段階発癌の1過程である可能性が示唆された。