ABSTRACT 884(P2-6)
 ポスターセッション一覧 トップ 


マウス肝炎ウイルス (MHV) の癌原性について:藤本二郎(阪大・医・2外)

Possible carcinogenicity of mouse hepatitis virus ( MHV ) on C3H/He mouse : Jiro FUJIMOTO (Fac. Med. Surg. II, Osaka Univ.)

[目的]従来 マウス肝炎ウイルス ( M H V ) には癌原性はないものとされる一方で、最近ヒトへの感染の可能性も示唆されている。雄 C3H/He マウスは遺伝子レベルの変異のため高率に肝癌が自然発生する。 M H V に感染した雄 C3H/He マウスの自然発癌が促進されるかどうかを調査することにより M H V の癌原性を検証する。
[方法]本学部移転前の旧 S P F マウス飼育室 ( 本実験前6カ月間マウスの導入なく、消毒・無菌を確認 ) で、ヒト癌移植ヌードマウスに由来する M H V のみに感染した雄 C3H/He マウスの自然発癌の状況 ( 旧 ) と、移転後の新築の動物実験施設の S P F マウス室での感染のない自然発癌の状況 ( 新 ) を比較した。生後6週の M H V などの感染のない S P F マウスを同一業者より購入して実験に供した。
[結果]肝癌の発生率は 旧 17/30 ( 56.7%) に対し 新 8/15 ( 53.3%) と大差はなかったが、マウス導入〜肝癌による死亡までの期間 ( 平均±S.D. ) は 旧 681.0±101.0 日に対し新 810.1±98.6 日と M H V 感染マウス ( 旧 ) のほうが有意に短縮していた ( p < 0.01 ) 。
[結語] M H V は雄 C3H/He マウスの肝癌発生を促進するものと考えられた。