ABSTRACT 890(P2-6)
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ヒト脳腫瘍におけるvirus genomeの検出 : 香畑智彦,福山幸三,萩原直司,田渕和雄(佐賀医大・脳外)

Detection of virus genome in human brain tumors : Tomohiko KOUHATA, Kouzou FUKUYAMA, Naoshi HAGIHARA, Kazuo TABUCHI (Department of Neurosurgery, Saga Medical School)

【目的】近年、astrocytomaやchoroid plexus tumor、ependymomaにおいて SV40 virus が検出され、また免疫抑制 状態の患者のoligoastrocytomaから JC virus が見つかるなど、中枢神経系の腫瘍とvirus infectionとの因果関係が改めて注目されている。今回我々は、p53遺伝子の異常が関与しない脳腫瘍の発生に、ある種のvirus infectionが直接腫瘍化に関与しているのではないかという考えの下に、脳腫瘍におけるvirus genomeの存在の有無について解析を行った。【方法】32例のglioblastoma、5例のmedulloblastoma、2例のependymomaの手術摘出標本を用いた。SV40 regulatory region、JC virus control region、 EB virus IR1 sequence各々に特異的な塩基配列を、PCRを用いて増幅し、virus genomeの存在の有無を検索した。【結果】3例のglioblastomaにおいてSV40 virusが検出された。症例は70才、73才、74才といずれも高齢者に発症したglioblastomaであった。medulloblastoma、ependymoma ではいずれのvirus genomeも検出されなかった。【結論】SV40 virusやJC virusが腫瘍組織から検出される場合、virus infectionと腫瘍化がどのように関連しているのかについては、種々議論のあるところである。今回、高齢者のglioblastoma3例においてSV40 virus genome が検出されたことは、p53遺伝子の異常を伴わないde novo type glioblastomaの発生機序を考える上で、極めて興味深いことと考えられる。