ABSTRACT 899(P3-1)
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非環式レチノイドによる肝発がん予防:
白鳥義宗、安田一朗、西脇理英、長瀬清亮、植松孝広、奥野正隆、武藤泰敏、森脇久隆(岐阜大・1内) 

Prevention of Second Primary Hepatomas by Acyclic Retinoid: Yoshimune SHIRATORI, Ichiro YASUDA, Rie MATSUSHIMA- NISHIWAKI, Seisuke NAGASE, Takahiro UEMATSU, Masataka OKUNO, Yasutoshi MUTO, Hisataka MORIWAKI (1st Dept. Int. Med., Gifu Univ.)

【目的】肝発がんは、肝臓全体が1つのフィールドとして、多中心性 (multicentric carcinogenesis) かつ多段階発がん (multistep carcinogenesis) の過程を辿ること(field cancerization) が知られており、慢性肝疾患患者の肝には、前がん細胞のクローンが複数存在していると考えられる。したがって、肝発がんを予防するためには、いわゆる「癌の芽」となるようなクローンを除去すること(clonal deletion)が不可欠と考えられる。レチノイドがこのような clonal deletion/clonal inhibition を実現することができるのかどうかについて検討した。【方法】肝癌を外科的または経皮的エタノール注入療法により根治的に治療できたと思われる症例(計89例)に対して、非環式レチノイド投与の二重盲検試験を行った。その際、a-fetoprotein (AFP)-L3分画をレクチン親和性電気泳動法と抗体特異的染色法により、高感度PIVKA-IIをELISA法により測定した。【成績】登録時AFP-L3分画が陽性であった非環式レチノイド群5例中4例では12カ月目で陰性化したのに対して、プラセボ群の4例は陽性のままであった(p<0.05)。一方、登録時AFP-L3分画が陰性であった非環式レチノイド群の16例は陰性のままであったが、プラセボ群の17例からは8例が陽性化した(p<0.01)。また別の腫瘍マーカーである高感度PIVKA-IIもプラセボ群では12カ月目で有意な増加を認め、特に再発例9例中6例で著明な増加を認めたが、非環式レチノイド群ではその増加が抑制されていた(p<0.05)。【結論】臨床レベルにおいてレチノイドが特定の前癌クローンを除去し、肝発がんを予防する効果を有することが明らかとなった。