ABSTRACT 900(P3-1)
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乳腺腫瘍のプロモーション過程に於けるシンバスタチンの抗腫瘍活性:稲野宏志、鈴木桂子(放医研、第1グループ)

Anti-carcinogenic activity of simvastatin during the promotion phase of radiation-induced mammary tumorigenesis of rats : Hiroshi INANO, Keiko SUZUKI ( Nat. Inst. Radiol. Sci., 1st Res. Group )

目的 、シンバスタチンはラクトン環を分子内に持つロバスタチンの誘導体で、HMG-CoA還元酵素阻害剤のプロドラッグである。本酵素の生成物、メバロン酸、はp21ras蛋白質の翻訳後修飾に必要なファルネシルピロリン酸の前駆体であることが知られている。一方、ラットを用いた研究から、放射線被曝による乳腺腫瘍の発生は、発達分化している乳腺組織がイニシエーションを受けやすく、その後の女性ホルモン剤 ( ジエチルスチルベストロール, DES ) の連続投与がプロモーターとなって高頻度に腫瘍化する事は既に報告した。本研究では、DES依存性プロモーション期間中に、シンバスタチン混餌を与えて、その腫瘍発生予防効果を検討した。
方法 、 妊娠20日目のウイスターMS系ラット ( 22 匹 ) にγ-線 ( 2.6Gy ) を全身照射し、哺乳終了直後から0.03%シンバスタチン含有飼料で飼育を開始した。さらに1ヶ月後から、DES徐放ペレットを背部皮下に埋め込み、2ヶ月毎に新しいペレットと交換しながら腫瘍発生を一年間観察した。対照群のラット ( 57匹 ) は全期間を通じてMB-1飼料で飼育した。
結果, 考察 、 対照群は一年間に50匹 ( 88% ) のラットに乳腺腫瘍が発生したが、シンバスタチン摂取ラットは8匹 ( 36% ) に発生して、有意に予防効果がみられた。全腫瘍に対する悪性腫瘍の割合は、対照群が34%、実験群が13%であった。担腫瘍ラット当たりの腫瘍数や潜伏期は差がなかった。また、対照群の腫瘍の75%がER+PgR+であったが、シンバスタチン摂取により両レセプター陽性腫瘍の割合が低下して、ホルモン非依存性腫瘍が増えた。実験終了時に血中のホルモン濃度を測定した結果、エストラジオール値が有意に低下していた。 以上の結果を内分泌学的に考察する。