ABSTRACT 948(P3-4)
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肝がん高罹患地域におけるB型、C型肝炎ウイルス感染、喫煙、飲酒、その他の要因が肝がん罹患リスクに及ぼす影響の前向き研究 : 森 満1, 原めぐみ1, 山本匡介2, 原 俊哉2, 楢本純一3, 本田守貞31佐賀医大・地域保健, 2同・内科, 3佐賀県医師会)

A prospective study of hepatitis B and C viral infections, smoking and drinking histories, and other factors on risk of hepatocellular carcinoma in the high incidence area : Mitsuru MORI1, Megumi HARA1, Kyosuke YAMAMOTO2, Toshiya HARA2, Junichi NARAMOTO3, Morisada HONDA3 (1Dept. of Commun. Health, 2Dept. of Int. Med., Saga Med. Schl., 3Saga Pref. Med. Assoc.)

〔目的〕佐賀県K町は肝がん罹患率が人口10万対男137.6、女41.3 (1992年)と高く、この地域での肝がん(HCC)罹患と関連する要因を検討した。〔方法〕1992年 6月にK町が実施した肝疾患検診を受診した3,059人(男981、女2078人)について、喫煙歴、飲酒歴、HBs抗原、第2世代HCV抗体(PHA法)などを把握した。医療機関、県がん登録、人口動態死亡票、住民票などを活用して1997年 3 月を終点とした前向き追跡調査を行った。1992年6月時点ですでに肝がんに罹患していた7人を除外した。平均追跡期間(標準偏差)4.6年(0.65)において、肝がん罹患22人(男14、女8)、全死亡112人、転出79人であった。リスク要因のHCC罹患に対するハザード比とその有意確率をCox回帰分析によって求め括弧内に示した。〔結果〕単変量解析の結果、男性(3.80, P<0.001)、HBs抗原陽性(5.80, P<0.001)、HCV抗体陽性高抗体価(212以上)(32.41, P<0.001)が有意に、また、喫煙歴(2.64, P=0.20)と飲酒歴(1.48, P=0.54)は有意ではなかったが、それぞれHCC罹患リスクを高めていた。HBs抗原陽性、かつHCV抗体陽性低抗体価(25〜211)からはHCCが1例発生していたが(19.62, P<0.001)、HCV抗体陽性低抗体価単独ではHCC発生は1例もなかった。男性、喫煙、飲酒、HBs抗原、HCV抗体の5変数による多変量解析を変数増減法によって行った結果、喫煙歴(3.61, P<0.01)、HBs抗原陽性(8.20, P<0.01)、HCV抗体陽性高抗体価(27.54, P<0.001)がHCC罹患リスクを有意に高めていた。〔結語〕喫煙がHCC罹患リスクを高める可能性が示された。HCV抗体価による予後の相違はウイルスの存否を反映していると考えられた。