ABSTRACT 976(P4-1)
 ポスターセッション一覧 トップ 


甲状腺髄様癌に検出された ret 遺伝子の変異による活性化の解析:浅井直也,岩下寿秀,村上秀樹,岩田洋介,高橋雅英(名大・医・病理)

Analysis of Ret activation by ret (D631Y) mutation detected in sporadic medullary thyroid carcinoma. Naoya ASAI,Toshihide IWASHITA,Hideki MURAKAMI,Yousuke IWATA,Masahide TAKAHASHI(Dept.Pathology. Nagoya Univ. Sch. Med.)
 
【目的】 受容体型チロシンキナーゼであるRet は、遺伝性疾患である多発性内分泌腫瘍症 (MEN) 2A型、2B型、家族性甲状腺髄様癌 (FMTC) の原因遺伝子で、germ line に変異が検出される。また、これらの疾患群に発生する甲状腺髄様癌と褐色細胞腫には、家族発生例だけでなく散発例においてもret 遺伝子の変異が腫瘍で生じている症例があり、甲状腺髄様癌では30〜40%にMEN2A型、2B型の変異が検出される。最近、散発性の甲状腺髄様癌の症例において、ret 遺伝子にMEN2A型、2B型以外の変異が報告された。今回、我々はこの変異によるRet の活性化について解析を行った。
【結果】報告された変異 (Asp631→Tyr) を ret 遺伝子に導入して発現ベクターに組込み、NIH3T3 細胞を用いてトランスフォーミング活性を調べたところ、活性化が検出された。変位Ret を発現するcell line には、Ret の自己チロシンリン酸化が起きていた。したがって、変異によりRet の活性化が起きると考えられた。
【考察】Asp631→Tyr の変異によってRet の活性化が起きたことから、報告された症例の髄様癌はRet の変異が腫瘍の発生に直接関与したと推測される。