ABSTRACT 981(P4-1)
 ポスターセッション一覧 トップ 


散発性乳癌における第17番染色体長腕TOC座位(17q25.1)の高頻度欠失:吹野晃一1・2,飯田有俊1,寺本明2,吉本賢隆3,,霞富士雄3,,秋山太4,坂元吾偉4,中村祐輔5,江見充11日本医大・老人研・分子生物,2日本医大・脳外,3,癌研・外,4癌研・病理,5東大・医科研・ヒトゲノム)

Frequent loss of heterozygosity at TOC locus on chromosome 17q25.1 in sporadic breast cancers: Koichi FUKINO1・2,Aritoshi IIDA1,Akira TERAMOTO2,Masataka YOSHIMOTO3,,Fujio KASUMI3,,Futoshi AKIYAMA4,Goi SAKAMOTO4,Yusuke NAKAMURA5,Mitsuru EMI1(1Dept.Mol.Biol.,Inst.Gerontol.,2Dept.Neurosurg.,Nippon Med.Sch.,3,Dept.Surg.,4Dept.Pathol.,Cancer Inst.,5Lab.Mol.Med.,Inst.Med.Sci.,Univ.Tokyo)

【目的・方法】散発性乳癌sporadic breast cancerにおいて、ヒト第17番染色体長腕(17q)には高頻度の染色体欠失が報告されており、これらの領域には散発性乳癌の発生にかかわる癌抑制遺伝子の存在が示唆されている。一方、家族性乳癌の発生にかかわるBRCA1遺伝子は17q21.1にmapされ、また食道癌を合併する遺伝性皮膚疾患tylosisの原因遺伝子TOCは17q25.1にmapされた。そこで散発性乳癌の発生とこれらの領域とのかかわりを検討するため、179例の散発性乳癌を対象として17q上の7個のマイクロサテライトマーカーを用いたPCR法によるLOH検索を行った。【結果】散発性乳癌179例中95例(53.1%)に1か所以上のLOHを認めた。各症例における欠失地図の検討から、17q25.1における共通欠失領域はD17S1839・D17S1603間の0.5cMに限局され、これはTOC座位と重なった。17q25.1のみにLOHを認めた症例は27例で17q21.1のみにLOHを認めた症例(7例)よりも多かった。また17qのLOHは乳頭腺管癌で高頻度に認められ、またホルモン受容体の消失率が高かった。【考察】第17番染色体17q21.1及び17q25.1にはそれぞれ乳癌関連癌抑制遺伝子の存在が示唆されたが、特に後者はTOCと一致する可能性が示唆されるとともにその不活性化の方が散発性乳癌の発生により重要であると考えられた。また17qの欠失は、組織学的には乳頭腺管癌の発生に関与していること、またホルモン依存性の喪失にかかわっていることが示唆された。