ABSTRACT 983(P4-1)
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ATM と p53 の相互作用の解析:清水弘子、山本健一( 金沢大・がん研・病態生理)

Analysis of physical interaction between ATM and p53:Hiroko SHIMIZU, Ken-ichi YAMAMOTO ( Dept. of Mol. Pathol., Cancer Res. Inst., Kanazawa Univ.)

ATMは、毛細血管拡張性運動失調症(AT, Ataxia Telangiectasia)の病因遺伝子で、3056アミノ酸からなる巨大分子をコードしている。ATMは、そのC末の塩基配列の相同性が高いことから、PI3キナーゼのファミリーメンバーで、その機能はDNA損傷伝達経路のシグナル伝達や、細胞周期のチェックポイントに関わることが示唆されているが、まだ不明な点が多い。AT細胞では、放射線照射によるp53の誘導がほとんど起こらないことが知られており、その結果、細胞周期のG1停止がなく、DNAの変異が蓄積し、高率で癌が発生すると考えられている。ATMとp53が細胞内で結合していることは、すでに報告されているが、私たちは、ATMのどの領域が、p53と結合するのかを明らかにしようとした。まず、ATMの全長及びN末欠失型のcDNAを組み込んだ発現ベクターをCOS7細胞にトランスフェクションして予想されたサイズのタンパクが発現することをウェスタンブロットで確認した。次に、ATMのどの領域がp53との結合に重要かを、免疫沈降法と、GST-p53に対する結合性で検討した。その結果、ATMのC末側2139アミノ酸から2426アミノ酸の領域が、p53との結合に必要であることがわかった。さらに、このATMとp53の結合にDNAが必要であるかどうかをDNaseA処理した場合としない場合のライセートで免疫沈降法により検討したが両者に差はなかった。以上のことより、ATMのp53との結合に必要な領域は、2139アミノ酸から2426アミノ酸の部分で、この結合にDNAは必須ではないことがわかった。さらに、ATMが直接p53をリン酸化するかどうかについて検討してみたが、現在までのところp53がリン酸化されることを確認できていない。