ABSTRACT 985(P4-1)
毛細血管拡張性運動失調症 Ataxia Telangiectasia(AT)保因者であるヘテロ変異体における細胞周期、アポトーシス誘導機構の解析:重田輝子1,高木正稔1.2,岩田敏1,浅田穣1,水谷修紀1 (1小児医療セ・ウイルス、2順天堂大・小児)
Apoptosis regulation and cell cycle check point in heterozygous carier of ATM mutation:Teruko SHIGETA 1,Masatoshi TAKAGI1.2,Satoshi IWATA1,Minoru ASADA1,Shuki MIZUTANI1 (1Dept. of Virol., Natl. Children's Med. Res. Ctr., 2Dept. of Pediatr. Juntendo Univ. School of Med.)
(目的)ATは毛細血管拡張、小脳性運動失調、免疫不全を主徴とする常染色体劣性の遺伝性疾患であり、悪性腫瘍を高発する。atm遺伝子のホモ変異体のみならずヘテロ変異体においても悪性腫瘍が高発することが知られている。この高発癌性のメカニズムについて検討するためヘテロ変異体における細胞生物学的な解析をした。
(対象)健常人、atm遺伝子のホモ、ヘテロの変異をもつ人よりEBVを用いて樹立したリンパ細胞株を用いた。
(方法)細胞周期調節機構をFACS及びwestern blot法を用いて検討した。アポトーシス誘導機構をFACS、western blot法及びin vitro kinase assayを用いて検討した。放射線感受性はclonogenic assayにより検討した。
(成績)ATM蛋白の発現は正常の約1/2-1/3であった。ヘテロ変異体はG1/S期細胞周期調節機構は正常であるが、多くの細胞株でmitotic/spindle check pointが破綻していた。またp53、p21Cip1/WAF1の活性化はホモ変異体と正常の中間の値を取った。いずれの細胞株でも放射線照射、 H2O2やC2-ceramideによるアポトーシス誘導能は障害されており、ミトコンドリア膜電位低下障害、p53、SAPK/JNK 、caspaseや活性酸素の活性化障害を伴っていた。しかし放射線感受性は正常であった。
(結論)ATヘテロ変異体は細胞株によって差は見られるもののapoptosis誘導能やM/S check pointの障害が認められ発癌リスクが高い事を示唆する結果が得られた。