ABSTRACT 989(P4-1)
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VPRによる染色体不安定性:石坂幸人1、志村まり1、高久史麿2 (1国立医療セ、研、難治疾患研究部、2自治医科大学)

Chromosome instability induced by VPR, an accessory gene of human immunodeficiency virus: Yukihito ISHIZAKA1, Mari SHIMURA1, Fumimaro TAKAKU2 (1Dept. of Intractable Diseases, Int. Med. Ctr. Jpn. Res. Inst., 2Jichi Med. Sch.)

【目的】エイズでは高率に悪性腫瘍が発症する。HIVアクセサリー遺伝子の一つであるVPR遺伝子は、細胞周期のM期と8Nに細胞を集積させる作用が報告されている。また近年、G2/M期における調節因子であるBUB1やTSG101の遺伝子変異がヒトの腫瘍で検出され、これらの変異と染色体不安定性との関連性が指摘されている。 エイズでの悪性腫瘍発症におけるVPRの関与を明らかにする目的で、VPR遺伝子による染色体異常誘発の可能性を検討した。【方法】細胞として、doxycycline(以下DOX)の添加によりVPR遺伝子発現を調節することの可能な細胞株(以下MIT-23)を用いた。MIT-23にVPRを発現させ、その前後でのDNA量、染色体数及び、ピリミジン合成系阻害剤であるPALAに対する抵抗性を指標とした遺伝子増幅能の解析を行った。【結果及び結論】 MIT-23ではDOXの添加により、細胞の可逆的なG2/M期と8Nでの貯留が観察された。DOXの添加と除去の操作を3回繰り返した細胞をDOX(-)の状態で培養を続けると、約8カ月後には解析した全ての細胞で染色体数の異常が検出された。一方、DOX処理を一回施した細胞では、コントロールに比較して約10倍のPALA抵抗性クローンの出現が検出され、この中にCAD遺伝子の増幅を示すクローンの存在も確認された。これらの結果から、VPRが積極的に染色体不安定性を誘発する可能性が示唆された。