ABSTRACT 990(P4-1)
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放射線で誘導された遺伝的不安定性の細胞がん化への寄与:渡邉正己、児玉靖司、鈴木啓司(長崎大・薬・放生命)

Participation of Radiation-induced Genetical Instability on Cell Transformation: Masami WATANABE, Seiji KODAMA, Keiji SUZUKI (Lab. Radiat. Life Sci., Schl. Pharm. Sci., Nagasaki Univ.)

【目的】最近、放射線照射された細胞に、照射の影響が長期間に渡って存在し、照射後、数10回の分裂を経た後に種々の生物影響が現れる現象が見つかった。この現象は、”遺伝的不安定性の誘導”といわれ、細胞がん化機構の解明に新しい知見を与えるものとして注目される。本研究では、X線照射された細胞における遺伝的不安定性誘導現象の実態を調べ、細胞がん化過程への関与を検証した。
【結果と考察】ヒトおよびマウス胎児細胞をもちいて、X線照射後40数回の細胞分裂を経て生じたコロニーに由来する細胞における突然変異頻度(HGPRT遺伝子座)を調べたところ、50%を越えるクローンに由来する細胞の突然変異頻度が自然突然変異頻度に比べ30数倍高いことが判った。このような遅延型影響は、増殖細胞死、異常核分裂頻度あるいは、染色体異常頻度を指標にしても同様に観察された。これらの現象は、遺伝子分裂装置の異常に絡んだものが多く、テロメアの不安定化と密接に関係すると推測される。これらの結果をもとに、遺伝的不安定状態の細胞がん化への関与を論ずる。