ABSTRACT 1002(P4-1)
大腸低分化腺癌の遺伝子変異・純型と混合型の比較 : 坂井雄三1、柳澤昭夫1、井下尚子1、羽田丈紀1、加藤洋1(癌研・病理部)
Genetic alteration of poorly differentiated colonic adenocarcinoma, pure and mixed type : Yuzo SAKAI1, Akio YANAGISAWA1, Naoko INOSHITA1, Takenori HADA1, Yo KATO1 (1Dept. of Pathology, Cancer Institute, Tokyo)
大腸の低分化腺癌は大腸癌のなかで比較的まれであり、その発癌機構についての解明が十分なされていない。またこの腫瘍は病理組織学的に高分化、中分化腺癌成分を含むものと含まないものが存在し、両者の臨床病理学的特徴の違いにより発癌機構の違いが予想されてきた。そこで今回、発癌に関わる遺伝子としてK-ras, TGFβRIIを挙げ、これらの遺伝子の変異と病理学的特徴の関連性について検討した。対象は外科的に切除された大腸低分化腺癌34例で、高分化、中分化腺癌成分を含まない純型(pure type)(P) 10例と、これらを含む混合型(mixed type)(M) 24例である。遺伝子解析はパラフィン切片よりmicrodissection法により腫瘍成分のみを選択的に採取しDNAを抽出し、K-rasはcodon12を、TGFβRIIはpoly A10の変異を解析した。1. K-rasの変異はPでは認められず(0/10)、Mでは5/24(21%)に存在した。2. TGFβRIIの変異はPは8/10(80%)、Mは8/24(33%)でPはMより変異の頻度が有意に高かった。大腸低分化腺癌においてK-ras および TGFβRIIの変異の立場から純型と混合型は明らかに異なり、両者の発癌機構の相異が示唆された。