ABSTRACT 1007(P4-1)
子宮体癌の発生・進展におけるDNA replication error とtransforming growth factor β receptor IIの研究:
大和田倫孝1, 鈴木光明1, 嵯峨 泰1, 柏木 宏2, 増渕成彦2,佐藤郁夫1(自治医大・1産婦, 2外)
Investigation of DNA replicaton error and transforming growth factor β receptor II in the carcinogenesis of endometrial cancer : Michitaka OHWADA1, Mitsuaki SUZUKI1, Yasushi SAGA1, Hiroshi KASHIWAGI2, Shigehiko MASUBUCHI2, Ikuo SATO1 (1Dept. of Obstet. Gynecol., 2Dept. of Surg., Jichi Med. Sch.)
[目的]子宮体癌の発生・進展への遺伝子不安定性の関与について, 子宮体癌症例におけるDNA replication error (RER) を検討した。 同時に transforming growth factor β receptor II(TGF-βRII) についても検討した。[対象・方法] 子宮体癌(類内膜型)93例を対象とした。RERの検討は以下の手順で行った。ホルマリン固定パラフィン包埋組織を材料とし, 癌および正常組織からそれぞれ常法により DNA を抽出した。5か所のmicrosatellite markerを用い, PCR後, その産物を8% acrylamide gel で電気泳動した。RERは異常バンドの出現, バンドのシフトが1か所以上でみられた場合をRER(+)と定義した。TGF-βRIIは(A)10 領域でPCRを行い, 異常の有無を判定した。[結果]1).子宮体癌におけるRER(+)症例は35% (32/93) にみられた。2). 進行期がI,II期でのRER(+) 症例は25% (16/64), III, IVでは55% (16/29) で, 後者で有意に高率であった(p=0.009)。リンパ節転移陽性症例では63% (10/16) がRER(+)で, 転移陰性症例 (27%, 20/75) に比べ, 有意に高率であった (p=0.013)。年齢, 分化度による差はみられなかった。3). TGF-βRIIはRER(+) 症例の22% (6/27) に異常が認められた。[結論]子宮体癌の発生・進展にRERが関与していると考えられた。またTGF-βRIIが関与しない症例がかなりあることが示唆された。