ABSTRACT 1094(P4-4)
ヒト腎細胞癌の発生と進展過程における染色体異常の変遷:吉田光明1, 藤井敦子1,2, 影山幸雄3, 藤井靖久3, 大島博幸3, 池内達郎1(1東京医歯大・難治研・遺伝疾患, 2医・保健衛生, 3泌尿器)
Variability of chromosome abnormalities in the course of human renal cell carcinoma development and progression: Mitsuaki A. YOSHIDA1, Atsuko FUJII1,2, Yukio KAGEYAMA3, Yasuhisa FUJII3, Hiroyuki OSHIMA3 and Tatsuro IKEUCHI1 (1Div. of Genet., Med. Res. Inst., 2 Sch. Allied Health Sci., 3Dept . Urol., Fac. of Med., Tokyo Med. and Dent. Univ.)
腫瘍細胞の染色体解析には, その異常がゲノム全体の中で一望でき, かつ個々の変化や個々の細胞単位で観察出来るという利点がある.また, 染色体異常の種類や出現頻度を指標にした細胞クローンの解析から発癌・進展過程における初期変化や二次的変化を追跡することも可能である。ここではヒト腎癌の発生・進展に関わる遺伝子の染色体領域の同定を目的として原発腫瘍81例の染色体を解析し, 病理組織学的ならびに臨床学的所見との対比を行った結果を報告する。染色体異常の中では3番染色体短腕 (3p) の欠失例 が最も高く(63%) かつ, 非乳頭型の腎癌に集中していた.後発変異として, 性染色体 (X or Y)の消失(48% ), 7-トリソミー(43% ), 14-モノソミー(36%)が高頻度に認められ, また,1番及び9番の構造異常が癌の進展に伴って確認された.さらに10-モノソミー, 16-トリソミー, 22-モノソミーが少数例ではあるがクローン性の二次的変化として認められた.これらの染色体異常と細胞型, 組織構築型, 細胞の異型度, 浸潤・転移の有無との関連性について考察したい.