ABSTRACT 1103(P4-4)
造血器腫瘍の細胞遺伝学的ならびに分子生物学的研究(第75報) 原爆被爆者白血病細胞における遺伝的不安定性:中西弥恵1,田中公夫1,許泰一2,土肥博雄2,藤原恵3,鎌田七男1(1広島大・原医研・分子細胞遺伝,2広島日赤・内,3広島日赤・病理)
Chromosome and molecular biological studies of hematopoietic malignant cells (75) Genetic instability in leukemic cells among atomic bomb survivors:Mitsue NAKANISHI1,Kimio TANAKA1,Taiichi KYO2,Hiroo DOHY2,Megumi FUJIWARA3,Nanao KAMADA1(1Dept.of Cancer Cytogenetics,Res.Inst.for Rad.Biol.&Med.,Hiroshima Univ.,2 Dept.of Int.Med.,Hiroshima Red Cross Hosp.3 Dept.of Pathol.,Hiroshima Red Cross Hosp.)
[目的] 癌の多段階発生・進展に関わる遺伝子異常の要因として遺伝的不安定性が注目されている。今回、被爆者白血病細胞における遺伝的不安定性の関与を検討するため、その指標となるマイクロサテライト不安定性(MSI)の解析を行った。[対象と方法] 被爆者急性骨髄性白血病(AML)14例、非被爆者AML15例および骨髄異形成症候群(MDS)1例を対象とした。正常組織としてEBウイルス細胞株あるいは白血病細胞浸潤を認めない剖検後のパラフィン包埋切片および白血病骨髄血よりDNAを抽出し、10ヶ所のマイクロサテライト領域(BAT40,D3S643,D5S107,IRF1,MYC,D9S171,WT1,TP53,DM,D17S855)をPCR法にて増幅し、DNAオートシークエンサーにて反復配列長を比較した。
[結果と考察] 非被爆者16例中2例にMSIが認められたのに対し、被爆者群では14例中10例と高率にMSIが認められた。この結果は極めて複雑な染色体異常の観察される被爆者AMLにおける遺伝的不安定性を証明し、その白血病発症への関与を示唆するものと考えられる。