ABSTRACT 1166(P4-7)
食道癌におけるクローン性の検討:田村祐樹1, 小玉正智1,杉原洋行2、服部隆則2(滋賀医科大学第一外科1,同第一病理2)
Clonal analysis of the esophageal cancer : Hiroki TAMURA1, Masashi KODAMA1, Hiroyuki SUGIHARA2, Takanori HATTORI2 (1 First Dept. of Surg., 2 First Dept. of Path., Shiga Univ. of Medical Sci.)
今回,ヒトアンドロゲンレセプター遺伝子メチル化法を用いて食道癌のクローン解析をおこなった。目的:食道癌の発生が多中心性発癌か否かを検討する。方法:1)X染色体のメチル化による不活化現象 。2)X染色体上の human androgen resepter (HUMARA) 遺伝子のCAGリピート数の違い、を利用してクローン性の解析を行った。対象:女性食道癌切除16症例。材料:全割パラフィン包埋切片11例および凍結組織5例を用いた。固定方法は4%パラホルムアルデヒド液に4℃12時間固定した。クローン性の解析の概要:1)腫瘍の複数箇所より組織を顕微鏡下で採取しDNAを抽出する。2)制限酵素 Hpa II を用いてDNAを処理する。3)不活化X染色体上の HUMARA 部を PCR 法にて増幅する。4)PCR産物を電気泳動し、銀染色する。5)X染色体の不活化パターンを複数部位で検討する。結果:16例中8例にX染色体上のHUMARA部にヘテロ接合性を認めた。表層拡大型表在癌の1例を含め、ヘテロ接合性の8例すべてにおいて腫瘍部のモノクローン性を呈し、かつ不活化パターンの一致を認めた。他の8例は,両親由来のX染色体に電気泳動上 band の差異が不明瞭であったため,解析不能であった。結語:女性食道癌で表層拡大型の症例を含め、同一病変内の複数箇所でモノクローン性を呈し、かつ不活化パターンの一致する症例が多く、食道癌の単中心性発癌が示唆された。