ABSTRACT 1171(P4-8)
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食道癌細胞株及び臨床検体におけるcyclinE遺伝子発現の意義:川口英俊1, 佐伯浩司1, 織田信弥2, 北村 薫1, 桑野博行1, 杉町圭蔵1 (1九大・医・二外, 2医病・腫瘍センター)

Expression of Cyclin E and growth activity in human esophageal cancer ; analysis in vitro and in vivo : Hidetoshi KAWAGUCHI1, Hiroshi SAEKI1, Shinya ODA2, Kaoru KITAMURA1, Hiroyuki KUWANO1 , Keizo SUGIMACHI1 (1Dept. Surg. II, Med., Kyusyu Univ., 2Cancer center, Kyusyu Univ. Hosp.)

【目的】消化器癌の悪性度と増殖活性は相関するとされている。細胞の増殖活性はCyclin E, D1 を中心としたG1 Cyclin群, およびそのパートナーである Cdk蛋白質群の発現状況に左右されると考えられる。今回我々は, cyclin E, D1遺伝子発現と食道癌細胞の増殖活性の関係を食道癌細胞株, 臨床検体両者における解析から明らかにし, G1 Cyclin が食道癌の悪性度の指標となりうるか否かを明らかにすることを目的とした。【方法】(1)細胞株の増殖活性の指標として, 食道癌細胞株(TE-1, -2, -5, -10, -12, -14)を用い, それぞれの細胞倍加時間を測定し, さらにフローサイトメトリーにより細胞周期各層の割合を算出した。次にNorthern blottingにより, 食道癌細胞株におけるcyclin E, D1, cdk2 mRNA発現量を解析した。(2)臨床検体を用いた検討として, 食道癌組織のパラフィン包埋切片を抗ヒトCyclinE, D1抗体を用いて免疫染色を行った。【結果】(1)cyclin Eとcdk2 mRNAの細胞株における発現量の多寡は非常に類似していた。(2)cyclin E, cdk2 mRNAの発現と細胞倍加時間には負の相関を認める傾向があり, G1期細胞との割合には負の相関を認めた。(3)腫瘍組織ではCyclin E蛋白質の発現が高いものは有意に深達度が深く, stageが進行しており, 予後不良であったが, Cyclin D1蛋白質発現と臨床病理学的因子, 予後に相関は認められなかった。【考察】(1)Cyclin EとCdk2は食道癌細胞株において協調して機能し, その増殖活性化に関与している可能性が考えられた。(2)臨床検体においても, 特にCyclin E発現量はその増殖活性を反映し, 悪性度の指標にもなりうることが示めされた。