ABSTRACT 1172(P4-8)
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無細胞複製系を用いた DNA 損傷に伴う DNA 複製抑制の解析:伊豆田俊二(熊本大・院・自然科学)

Suppression of DNA synthesis with DNA damage in Xenopus egg extract: Shunji IZUTA (Grad. Sch. Sci. Tech., Kumamoto Univ.)

 真核細胞には、DNA が紫外線などで損傷を受けたときに細胞周期を一時的に停止する、いわゆるチェックポイント機構を有することが知られている。酵母や哺乳動物培養細胞を用いた研究から、チェックポイント機構に関与する遺伝子が明らかにされつつあるが、生化学的な解析は進んでおらず、特に S 期チェックポイントにおける DNA複製抑制の機構は不明な点が多く残されている。そこで今回、1本鎖 DNA を鋳型としたアフリカツメガエル卵無細胞複製系を S 期における DNA 鎖伸長反応のモデルシステムに用い、DNA 損傷に伴う DNA 合成抑制について解析した。損傷としては鋳型 DNA に主としてチミンダイマーを形成する紫外線 (0-360 J/m2)、および新生 DNA 鎖に取り込まれて変異を引き起こすヌクレオチドアナログである 8-oxo-dGTP(50μM)を用いた。
 紫外線損傷1本鎖 DNA を鋳型にした場合、DNA 合成量は紫外線照射量に対応して直線的に減少し、チミンダイマー形成頻度とよい相関を示した。しかしながら合成された DNA の平均鎖長は紫外線照射量に対し指数関数的に減少した。従って DNA が紫外線により損傷を受けたとき、短鎖 DNA 合成はあまり影響を受けないが、長鎖合成は非常に強く抑制されることが示唆された。一方、8-oxo-dGTP も強い DNA 合成抑制効果を示し、特に鎖合成開始に影響が見られた。8-oxo-dGTP による DNA 合成抑制はタンパク質りん酸化酵素阻害剤の一つであるスタウロスポリン (5 nM) によって解除された。このことは DNA 合成抑制にはタンパク質りん酸化酵素を介したシグナル伝達系が関与していることを示唆している。