ABSTRACT 1176(P4-8)
 ポスターセッション一覧 トップ 


正常および腫瘍化リンパ細胞の増殖能に及ぼす静止磁場の影響:細川友秀(京都教育大学・生命科学)

Effects of a strong static magnetic field on proliferative activites of normal and malignant lymphoid cells:Tomohide HOSOKAWA ( Dept. Life Sci., Kyoto Univ. Education)

(目的)様々な磁場の生体に及ぼす影響が注目されている。我々は一昨年の本学会で、試験管内で静止強磁場に曝露された癌細胞が増殖と転移能力を高く保持していることを報告した。本研究では、このような磁場曝露による増殖機能の増強が、腫瘍細胞に特殊な現象か、正常細胞にも見られる一般的な現象であるかを検討した。
(方法)胸腺細胞、脾臓細胞またはEL- 4 T-lymphoma 細胞をNMR測定用チューブに入れて6.34テスラの静止磁場に曝露。曝露後チューブから細胞を回収し、96-wellマイクロプレートで種々の細胞密度で、実験によってはマイトジェンを加えて1〜3日培養した後、MTT染色法で各well内の細胞数を評価し、細胞の増殖の程度を曝露群と非曝露群で比較した。
(結果と考察)磁場曝露後の回収細胞数を非曝露対照と比較すると、EL-4細胞では曝露中にチューブ内で細胞の増殖が見られたのに対し、非曝露群ではチューブ内での増殖は見られず、曝露時間の増加に伴い両者の回収細胞数の差は大きくなった。また、磁場曝露後の細胞の増殖能力を非曝露群と比較すると、曝露群で有意に高く、曝露時間の増加とともにその差は著明になった。正常の胸腺や脾臓細胞では曝露時間の増加に伴い回収細胞数が減少したが、その程度は曝露群で小さく回収細胞は有意に多かった。曝露後の増殖能力も、脾臓細胞、胸腺細胞ともに曝露群で有意に高かった。これらの結果は、細胞の生存にとって比較的不利な条件下で静止強磁場内に細胞を保持すると、正常細胞、腫瘍細胞に関わらず、その増殖機能が増強されるか高く維持されることを示唆する。このような腫瘍細胞への影響は、特に、生体内の早期癌の生育にとって重要な意味を持つと考えられる。