ABSTRACT 1182(P4-8)
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乳癌におけるestrogen receptor α及びβの mRNA発現の解析:大本陽子, 岩瀬弘敬, 岩田広治, 原泰夫, 安藤由明, 小林俊三, 藤井義敬(名市大・医・2外, 愛知がんセ・乳外)

Expression Analysis of Estrogen Receptor α and β Messenger RNA in Breast Cancer : 1Yoko OMOTO, 1Hirotaka IWASE, 2Hiroji IWATA, 1Yasuo HARA, 1Yoshiaki ANDO, 1Shunzo KOBAYASHI, 1Yoshitaka FUIII (1Dept. of Surg. 2, Nagoya City Univ., Med. School, 2Dept. of Breast Surg. Aichi Cancer Ctr.)

【目的】我々は乳癌組織内のEstrogen receptor(以下ER)状況とホルモン依存性が一致しない例が存在することから、これまでER遺伝子の変異を中心に解析を進めてきた。しかしER遺伝子のgeneticな変異は臨床例ではまれであった。近年、従来のER(ERα)とhomologの強いERβがクローニングされ、ERβの機能について様々な検討がなされている。そこで、当科における臨床例及び乳癌cell lineを対象とし、RT-PCRによりERα及びβのmRNA発現を解析し、乳癌の進展におけるERβと臨床病理学的因子との関連を検討した。【対象および方法】対象は当科にて初回手術を施行した乳癌患者80例より得られた腫瘍組織と一部の正常乳腺組織、乳癌cell line5種である。hormone binding domain内のexonを検出するPCR primerを設計し、RT-PCR法によりexonの存在とそのsplicing variantを確認した。【結果】ERαのmRNA発現と蛋白発現とは一部の症例では解離が認められたものの、よく相関した。またsplicing variantが確認された例には必ずwild typeのexonが存在していたが、その比は症例によって異なり、臨床病理学的因子とも関連がなかった。ERβのRT-PCRでは正常乳腺及び乳癌組織とも約3分の2にシグナルが検出されたが、ERαのmRNA発現、蛋白量、および他の臨床病理学的因子とも関連がなかった。【考察】ERβの発現は正常乳腺でも認められるものと認められないものが存在すること、hormone receptorを含めた臨床病理学的因子との関連は認められないことから、ERβの発現が乳癌の進展には大きな影響を与えていないと思われた。