ABSTRACT 1186(P4-8)
ヒト唾液腺癌細胞 (TYS) におけるTSC-22の過剰発現は細胞の抗癌剤に対する感受性を上昇させる:内田大亮, 川又 均, 日野聡史, 表原文江, 吉田秀夫, 佐藤光信(徳島大・歯・2口外)
Over-expression of TSC-22 in a human salivary gland cancer cell line, TYS markedly enhances their sensitivity against several chemotherapeutic agents : Daisuke UCHIDA, Hitoshi KAWAMATA, Satoshi HINO, Fumie OMOTEHARA, Hideo YOSHIDA, Mitsunobu SATO (2nd. Dept. of Oral and Maxillofac. Surg., Tokushima Univ. Sch. of Dent.)
我々はヒト唾液腺癌細胞 (TYS)より分化誘導剤ベスナリノンで誘導される遺伝子としてTSC-22 cDNAをクローニングした (BJC, 77, 1998) 。また、TSC-22 はTYS 細胞の増殖を負に制御し、その発現低下は唾液腺腫瘍発生に関与している可能性も報告した (Cancer Res., 58, 1998)。今回 TSC-22 とGFP (green fluorescent protein) との融合蛋白をtransfection によりTYS細胞に過剰発現させTSC-22 蛋白の細胞内での局在および transfectants の増殖能、さらに種々の抗癌剤に対する感受性について検索した。その結果TSC-22-GFP 蛋白は TYS 細胞の細胞質に局在していることが明らかとなった。10% FCS 存在下あるいは非存在下での transfectants の増殖能はコントロール細胞と比較して明らかな差は認められなかった。ところが各細胞を種々の抗癌剤 (5FU, CDDP, PEP) で処理したところ transfectants において全ての抗癌剤に対する感受性がコントロール細胞と比較して有意に (P<0.05) 上昇していた。また、抗癌剤処理にて死滅した細胞ではTSC-22- GFP 融合蛋白質が細胞質ではなく核に存在していた。以上の結果より唾液腺癌細胞におけるTSC-22 の過剰発現は、単独では明らかな増殖抑制作用を示さないが、細胞の抗癌剤への感受性を上昇させることが明らかとなった。また、その作用に TSC-22 蛋白質の細胞質から核への translocation が関与している可能性が示唆された。