ABSTRACT 1189(P4-9)
分化誘導抑制因子 nm23 の 発現抑制による白血病細胞の増殖分化の変動:角 純子、粕壁 隆、本間良夫(埼玉がんセ・研)
Growth and differentiation of leukemic cells treated with nm23 antisense oligonucleotides : Junko KADO, Takashi KASUKABE, Yoshio HONMA (Saitama Cancer Center Res. Inst.)
[目的] 急性骨髄性白血病において分化誘導抑制因子/nm23遺伝子が過剰発現していること、その発現量は治療感受性や生存率と有意に相関し白血病の新しい予後因子となること等を私たちは、報告してきた。本年度は nm23 アンチセンス S-オリゴヌクレオチドを用いてnm23遺伝子発現および増殖分化に対する 効果を検討した。 [方法] nm23-H1およびnm23-H2 に対する高純度アンチセンスS-オリゴを作製し、白血病細胞(U937) の増殖(細胞数、生存率)および分化(NBT還元能、形態、CD68 発現)への 効果を調べた。ランダムアンチセンスS-オリゴを対照に用いた。[結果] nm23-H1 アンチセンスS-オリゴはU937 細胞の増殖を抑制した。この抑制は、4 日目以降に始まり7 日目で約 60% 阻害であった。また、nm23-H2アンチセンスS-オリゴについても同様の結果を得た。対照のランダムアンチセンスS-オリゴは増殖を抑制しなかった。nm23-H1 アンチセンスS-オリゴを7 日間処理したU937細胞はNBT還元能を示さなかったが、CD68 弱陽性であった。nm23-H1抗体を用いた免疫染色で細胞内のnm23-H1蛋白質の減少を確認した。一方、nm23-H1 アンチセンスS-オリゴはTPAによるU937細胞の分化誘導を促進した。 [考察] nm23-H1 アンチセンスS-オリゴは単独で白血病細胞の増殖を抑制し軽度の分化を誘導し、TPAによる分化誘導を促進した。白血病細胞に過剰発現しているnm23遺伝子の発現を抑制することは白血病治療の新しい分子標的となると考えられる。