ABSTRACT 1193(P4-9)
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ES細胞を用いた血管造血細胞系列初期発生過程の解析:小川峰太郎,西川伸一(京大・医・分子遺伝)

Resolution and Characterization of Early Developmental Stages of Hematopoietic and Endothelial Precursors in a Culture System of Murine Embryonic Stem Cells : Minetaro OGAWA, Shin-Ichi NISHIKAWA (Department of Molecular Genetics, Faculty of Medicine, Kyoto University)

Myb、Tal1、Cbfa2(AML1)など白血病に関連する癌遺伝子のいくつかは、その正常な機能が造血細胞系列の初期発生過程に必須であることが知られている。また、がんの悪性化に関与する血管新生は、胎生期の血管形成における重要な過程のひとつである。血液・血管内皮細胞系列は、中胚葉に由来する共通の前駆細胞から発生すると考えられている。この発生過程を制御する分子的メカニズムの解明を最終的な目標として、胚幹細胞(ES細胞)の試験管内分化システムを用いて発生の各中間段階の同定と純化を行っている。
この実験系は、E-カドヘリン、FLK1、VE-カドヘリン等の表面マーカーを組み合わせることで、中胚葉とそれから分化したサブセットを同定・純化し、試験管内で血液や血管内皮細胞系列への分化を誘導するものである。サブセットの純化と試験管内での分化誘導を段階的に繰り返すことにより、発生過程を中間段階に分解しそれぞれを性格づけることが可能である。ES細胞からの分化誘導においても、胎仔組織中に直接検出されるサブセットを経て発生が進行し、VE-カドヘリンを発現する血管内皮細胞中のサブセットから血液細胞が発生することが示された。インテグリンなどをマーカーとして血液細胞系列と血管内皮細胞系列のブランチングポイントを同定することができ、この系列の分化決定の分子メカニズムを解析する材料が整いつつある。今後、遺伝子の導入や相同組み換え技術を利用することで、細胞の分化を任意に制御する実験系を確立する必要がある。