ABSTRACT 1205(P4-9)
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ホルボルエステルTPAによる低分化型ヒト前立腺がん細胞TSU-Pr1のミクログリア細胞への分化誘導:板保 智大,○高橋 信泰,清水 貴壽,武田 健 (東京理科大・薬・衛生化)

Induction by phorbol ester TPA of differentiation of a human prostatic cancer cell line TSU-Pr1 into cells with characteristics of microglia: Tomohiro ITAYASU,Nobuyasu TAKAHASHI,Takahisa SHIMIZU, and Ken TAKEDA (Fac. Pharmaceut. Sci. , Sci. Univ. Tokyo)

【目的】悪性に転化した前立腺がんの有効な治療法は確立されていない。性状の変換をはかる目的で、リンパ節転移巣から樹立した低分化型ヒト前立腺がん細胞TSU-Pr1の分化誘導を試みた。TPAがTSU-Pr1細胞に強い増殖抑制効果と形態変化誘導活性を示すことが明らかとなった(昨年度本学会)。今回,分化に伴い変動する諸性状を詳細に解析した。
【方法】ヒト前立腺がん細胞株TSU-Pr1を分化誘導剤を添加した培地で培養後(〜7日)、形態変化と増殖能の変化を調べた。また分化誘導に伴って現れる諸性状を経時的に検討した。
【結果】1) TSU-Pr1細胞はTPAにより形態学的にミクログリア様細胞に分化し、7日目ではほとんどの細胞が形態変化した。2) 分化した細胞の中にはNBT還元能、非特異型エステラーゼ活性が陽性を示すものがあった。3) ミクログリアにおいて発現が認められているLDLレセプターやCD11bの発現がみられるようになった。また、アセチルコリンエステラーゼタンパク量が増加した。4) 増殖能が著しく抑制され、10-8Mの濃度で生細胞数の増加は認められなかった。5) Bcl-2が減少し、c-mycの発現が消失した。一方、細胞周期を負に制御するp21のタンパク質発現が12時間以内に強く誘導された。6) ディッシュ面への接着能、マトリゲル浸潤能が著しく抑制された。
【考察】TPAが分化誘導するシグナル伝達機構に興味が持たれる。