ABSTRACT 1206(P4-9)
ヒト前立腺がん細胞LNCaPの神経内分泌様細胞への分化誘導に伴い変動する遺伝子の解析:小沢 英行,清水 貴壽,武田 健 (東京理科大・薬・衛生化)
Analysis of gene expression of human prostatic cancer LNCaP cells duringdifferentiation to neuroendcrine like cells :Hideyuki OZAWA, Takahisa SHIMIZU, and Ken TAKEDA ( Dept. Hygiene-Chem., Fac. Pharm. Sci., Sci. Univ. Tokyo )
【目的】悪性転化した前立腺がんの有効な治療法は未だに確立されていない。我々は昨年度の本学会でヒト前立腺がん細胞LNCaPがプロスタグランジンE2(PGE2)とパパベリンの併用で神経内分泌様細胞に分化誘導されることを明らかにした。今回、分化した細胞の性状を明らかにするとともに、分化に伴って発現が変動する遺伝子を解析した。
【方法】LNCaP細胞にPGE2(10-5M)とパパベリン(10-5M)を添加し、6日間培養し、分化誘導に伴う諸性状の変化を調べた。遺伝子の発現変動はノーザンブロット法やディファレンシャルディスプレイ法等で解析した。
【結果】1)LNCaP細胞はPGE2とパパベリン併用により、あるいはコレラトキシン添加により、細胞体が小さくなり、神経様の突起が伸長し、ネットワークを形成した。2)アセチルコリンエステラーゼの発現量が増加し、クロモグラニンA、神経特異的エノラーゼ活性が認められた。3)c-mycの発現が低下し、Bcl-2タンパク質量が低下した。4)コロニー形成能が著しく低下した。5)マトリゲルに対する浸潤能が低下した。
【考察】以上の結果から、LNCaP細胞は神経内分泌様細胞に分化誘導されるとともに、悪性度が低下することが示唆された。分化誘導過程で発現が変動する遺伝子がいくつか採れているが、今後、ヌクレオチド配列を決定し、分化における役割等を解析していきたい。