ABSTRACT 1324(P5-2)
肝細胞癌におけるTGF-β II型受容体遺伝子の変異の検索: 三上哲弥、牧野鈴子、三田村圭二 (昭和大・医・二内)
Analysis of mutations of the TGF-β type II receptor gene in hepatocellular carcinomas: Tetsuya MIKAMI, Reiko MAKINO, Keiji MITAMURA (Second Dept. of Int. Med., Showa Univ., School of Med.)
【目的】ヒト肝細胞癌の発生機序には不明な点が多く、特異的な癌関連遺伝子も同定されていない。TGF-βには細胞増殖抑制作用があり数種類の癌ではTGF-β II型受容体(TβR-II)遺伝子の異常が報告されている。今回我々は肝発癌機構を解明するため、ヒト肝細胞癌におけるTβR-II遺伝子異常の関与について検討した。【方法】肝細胞癌27例の手術による切除組織からDNAを抽出した。TβR-II遺伝子のtransmembrane領域およびセリン/スレオニンキナーゼ領域を含むエクソン4から7の領域の変異をPCR-SSCP法を用いて検出した。さらにそれよりN末端側のポリA領域(codon125〜128)の変異についてもPCR法を用いて検討した。【結果】TβR-II遺伝子では27例中5例(19%)に変異を認め、これらはいずれも中〜低分化型の肝細胞癌であった。ポリA領域における変異は認められなかった。【結論】肝細胞の癌化には TβR-II遺伝子の異常の関与が推定された。また、本遺伝子の変異は中〜低分化型の肝細胞癌に認められ、肝細胞癌の脱分化を促進する可能性が推定される。