ABSTRACT 1325(P5-2)
胆道系腫瘍細胞株におけるTGFβシグナル伝達異常の解析:八隅秀二郎1,2、胡興柏1, 2、吉川清次1、菅健治1、関賢二1、千葉勉2、高橋玲1(1京大・医・消内、2京大・医・腫瘍生物)
Abnormal TGFβ signal transduction in biliary tract cancer cell lines: Shujiro YAZUMI1, 2, Kohaku KO1, 2, Kiyotsugu YOSHIKAWA2, Kenji SUGA2, Kenji SEKI2, Tsutomu CHIBA1, Rei TAKAHASHI2 (1Dept. Gastoenterology and Hepatology, Grad. Sch. Med., Kyoto Univ. 2Dept. Pathol. and Tumor Biol., Grad. Sch. Med., Kyoto Univ.)
【目的】癌抑制遺伝子DPC4/Smad4は、膵癌の約50%、大腸癌の約15%で不活化が報告されている。胆道(肝外胆管・胆嚢・肝内胆管)は、腹側膵原基と同じ前腸尾側端の肝窩より発生する。 胆道系癌細胞株におけるTGFβシグナル伝達系の異常をDPC4/Smad4を中心に検討したので報告する。
【材料・方法】細胞株:RBE (肝内胆管癌)、KMBC, Sk-ChA-1 (肝外胆管癌)、Mz-ChA-1, Mz-ChA-2 (胆嚢癌)を使用した。TGFβの作用は細胞増殖とPlasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1) をプロモーターとしたベクター (p800neoLuci)を安定性に導入し、ルシフェラーゼ活性で検討した。TGFβ typeII receptor (TβRII)のBAT-RIIとDPC4をそれぞれPCR, RT-PCRを行い塩基配列を決定した。
【結果】TGFβによる増殖抑制試験では、KMBCとMz-ChA-1にて抑制がかからなかった。この二つの細胞株ではTGFβによるルシフェラーゼ活性の上昇はみられなかった。TGF β typeII receptorの異常は、KMBCにおいてのみA9/10を認めた。DPC4のRT-PCRでは、全ての細胞株で正常のものとExon5-6のsplicing variantを認めた。さらに、Mz-ChA-1ではExon4-6のsplicing variantも存在し、正常のものよりExon5-6のsplicingの方が強発現していた。
【結論】胆道系の癌細胞株5種類のうちふたつでTGFβシグナル伝達系の異常を認めた。DPC4においてsplicing variantが存在し、シグナル伝達系に何らかの関わりがある可能性が類推された。現在、DPC4についてNorthern blotting及びsplicing variantの機能を検討中である。