ABSTRACT 1328(P5-2)
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肺癌におけるSmad遺伝子群の異常:長田啓隆1,2,柳澤聖1,増田彰2,杉山雅2,斉藤敏子2,高橋利忠3,高橋隆1,21愛知がんセ・研・病態.2愛知がんセ・研・超微.3愛知がんセ・研・免疫)

Alterations of the Smad genes in human lung cancers: Hirotaka OSADA1,2, Kiyoshi YANAGISAWA1, Akira MASUDA1, Miyabi SUGIYAMA1, Toshiko SAITO1, Toshitada TAKAHASHI3, and Takashi TAKAHASHI1 (1Lab. Ultrastruct. Res., 2Pathophysiol. Unit, 3Lab. Immunol., Aichi Cancer Center, Res. Inst.)

【目的】我々は先回、肺癌症例の一部にSmad2或いはDPC4(Smad4)の変異が見られること、及び肺癌細胞株で高頻度にTGF-β反応性が低下していることを報告した。これまでに詳細な解析が加えられた不活化変異とは異なる部位に位置するこれらのSmad遺伝子変異について、TGF-βシグナル伝達機能の不活化に関する検討を加えた。
【方法】Smad変異を持つ癌組織からRT-PCR法により変異Smad遺伝子を増幅し、発現vectorへ挿入した。レポーター解析にはTGF-β反応性のPAI-1プロモーターに由来するp800lucを用いた。
【結果及び考察】4種のDPC4変異(S203fs・R420H・R441P・P511fs)と2種のSmad2変異(del434-6・D450H)を解析した。これらの変異Smadを用いたレポーター解析では、すべての変異で正常Smad遺伝子に比しTGF-βシグナル伝達能の低下が見られ、特にS203fs, R441P, P511fs, D450Hでは著しい障害が見られた。R420Hの機能低下は最も軽度であった。S203fsはリンカー領域に変異がみられるものであり、それ以外の変異は全てMH2領域に生じたものであったが、本結果よりヒト肺癌症例に認められたSmad変異は実際に機能障害を伴っていることが確認された。MH2領域はループ・ヘリックス領域とヘリックス束構造との結合で三量体を形成するとされているが、P511fs、R441Pはこれらの構造を破壊すると考えられる変異であり、D450Hは特に結合に重要な残基の変異と考えられる。また、del434-6はSmad2・DPC4の結合に重要と想定される領域に見られる異常である。一方、R420Hは機能的に不明な領域である。今回の結果は、既報のMH2の結晶構造から予測される変異の重要度と実際のTGF-βシグナル伝達異常に良い相関を示している。現在、変異Smad遺伝子の三量体形成能障害等について更に検討を加えつつある。