ABSTRACT 1338(P5-2)
同一細胞株由来で異なる放射線感受性を有する2つの細胞株を用いた放射線感受性に関する分子生物学的検討:前林勝也,三橋紀夫,桜井英幸,石川 仁,新部英男 (群馬大・放医)
Relationship between signal transduction of apoptosis-related protein and radiosensitivity in two rat cell lines with a same origin but different radiosensitivity: Katsuya MAEBAYASHI, Norio MITSUHASHI, Hideyuki SAKURAI, Hitoshi ISHIKAWA, Hideo NIIBE (Dept.of Radiol., Gunma Univ.)
【目的】放射線誘発アポトーシスを比較的多く起こし放射線感受性の高いラット卵黄嚢腫瘍細胞株 (NMT-1) と,この細胞株に繰り返し照射することで樹立した放射線抵抗性株 (NMT-1R)を用いてp53がん抑制遺伝子 (p53) の変異の有無ならびに照射によるp53, p21ならびにbax発現の経時的変化について検討した.
【方法】p53 (exon 4-8) のPCR-SSCP法を行い,変異が確認された領域についてはdirect sequenceにより変異部の塩基配列を決定した.また,両細胞株に10 Gy の照射を行い,経時的 (1, 3, 6, 12, 24時間) にタンパクを抽出し,p53, p21ならびにbax発現の変化をwestern blottingを用いて検討した.
【結果】NMT-1にはp53の変異は認められなかったが,NMT-1Rではp53 exon7に変異を認め,2つのコドンにまたがる連続する3塩基の置換が確認された.また,NMT-1R では照射によるp53, p21ならびにbaxのタンパク発現には変化が認められなかったが,NMT-1では,照射1時間後から発現の増強が認められ,p21では1時間後に,p53ならびにbaxでは3時間後に発現のピークが認められた.
【結論】両細胞の放射線感受性の差異はp53とそれに引き続くsignal伝達機構に関連する可能性が示唆された.